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第34話 好き 3
本当は数学の課題なんて、とっくに終わっている。
食堂を出た俺は、屋上出入口前の踊り場に足が向かっていた。教室に戻って、クラスメイトからの冷やかしが待っているかもしれないと考えると、ひとりになりたかった。
鍵がかかっていて屋上へは出入り出来ないためか、ここへやってくる生徒はほとんどいない。
誰もいない階段の最上段に座り、溜息を吐く。
榛は、なんであんなに堂々と言えるんだろう。俺の事が好きだなんて。嫌がらせにしても、本心だったとしても、男なのに男が好きだなんて言ってしまえば、周りから好奇の目で見られるのは確実なのに。
「・・・イケメン様は何を言っても許されるのか・・・」
「イケメンだと思ってくれてんだ?」
呟いた独り言に返事が返ってきて、俯いていた顔を上げると、5段ほど下に腕組みした榛が立っている。
「公衆の面前でイケメンの彼氏に恥かかせないでよ」
「ご・・・めん」
恥かかせてんのはお前だろ!と思いつつ、不機嫌そうな榛の様子に思わず謝ってしまう。
「悪いと思ってんなら、ちんこ出して見せてよ」
「・・・は?」
「俺、怒ってんの。脱げよ」
なんでだよ!
・・・だけど、榛の刺さるような視線に逆らえなくて、俺は立ち上がってズボンと下着を膝まで下ろした。
階段の手すりに手をつくように言われて、榛に背を向ける体勢になる。
「んぐっ・・・」
いきなり後ろに異物を挿入される感触に、体が硬直する。
「色気ねぇ声。『あん』とか言えよな」
「お・・・まえなぁ、いきなり、そんな声、で、出るわけ・・・」
出るわけない。女じゃねぇっつーの。
そのまま異物感に耐えていると、榛は俺の下着とズボンを上げる。
「俺に恥かかせた罰。俺がいいって言うまで入れといて」
「え・・・、このまま?授業受けろって・・・?」
「そう。一番小さいプラグだから余裕だろ?」
嘘だろ。いくら小さいといっても、ケツの中での存在感が凄いんですけど・・・。
「それとも、今からでも学食戻って、俺が好きだって大声で叫んでくれんの?」
「それ・・・は、できない」
できるわけない。そんな事したら、平凡からまた一歩、どころか一万歩くらい遠のいてしまう。
「俺を好きだって言うより、それ咥え込んでる方がマシだろ?」
榛が、またあの歪んだ笑顔を浮かべる。
仕方なくそのままベルトを締める。
う・・・。後ろからの刺激で、前が反応してしまいそうだ。
俺が前屈みになったのを見た榛は、着ていたセーターを脱いで頭にズボッと被せてくれる。
「あきが着てたらブカブカだし、勃っても隠せるだろ」
意地悪なんだか優しいんだかわかんねぇ。
榛のセーターは、俺の太腿の3分の1程を覆う位の大きさだった。
170もない俺の15センチ以上うえにある榛の小さい顔。身長差にも落胆するけど、後輩に体格差までこんなに負けていると思うと、なんだか情けない・・・。
本当に、立場が逆転したんだと思い知らされる。
「歩ける?」
「なんとか・・・」
一歩踏み出すごとにプラグが内壁を擦って、微かな快感に足が震える。
「教室まで送る」
榛が差し出してきた大きな手。誰かに見られたら、と不安になったが、この状態では縋るしかなさそうだ。
榛に手を引かれて教室へと向かう。
そして地獄のような午後が始まった。
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