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第35話 地獄と天国 1
榛の手にしがみついたまま自分の席につくと、名取が心配そうに声を掛けてくる。
「ちょと、樫村大丈夫?なんか具合悪そうなんだけど・・・」
「樫村先輩、体調悪いらしくて。倒れないように気にしててもらえますか?」
「え?う、うん」
榛は名取にキラキラのイケメンスマイルを向けて、教室を出ていく。
「やっぱ高杉くん、王子だわ・・・。羨ましい!って樫村、具合悪いなら保健室行ったら?」
「イヤ。大丈夫、大人しくしてたら結構平気」
「・・・あ、そう」
ひとりで歩いて保健室なんて行ける状態じゃない。
チャイムが鳴って、5限目の授業が始まる。
動かずにいたら、ただの異物感だけで、変な気分にならずに済みそうだ。
が、しかしこういう時に限って先生に問題を振られてしまう俺・・・。
立ち上がり、黒板に向かおうとするが、プラグが動いて、自分の意志とは関係なく穴の中の筋肉がヒクヒクと小さな収縮を繰り返す。
「先生。樫村体調良くないみたいです」
俺の異変に気付いた名取が助け舟を出してくれたおかげで、難を逃れる事ができた。
「ありがとな」
「王子に頼まれてるからね、あんたの事」
名取、いいやつだ。俺、なんの役にも立てなくてごめん。俺なんかが、名取の好きな人と付き合っちゃってごめん。
なんとか5限を乗り切り、あと1時間、残るは世界史の授業だけ・・・机に伏せててもなんにも言われないし。なにより教室の移動が無くて助かった。
あ~、もうなんか疲れたな。土曜日から続けて3日間も榛に体をいいようにされてる。
昨日だって、今朝だって、ケツに榛のデカいの突っ込まれて、何回も中擦られて、何回イったかもわかんねぇ・・・
思い出すと、なんだか下半身が疼いてくる。
なんか、急にケツん中きゅんきゅんしてきた・・・。
途端にプラグの存在感がどんどん主張し始める。
考えんな、思い出すな、思えば思うほど、榛の手の熱さを、唇と舌の感触を、脳が勝手にループ再生する。シャツとセーターからほのかに漂う匂いが、まるで榛に包まれているかの様な錯覚さえ起こさせる。
やっべぇ・・・。
ちんこ、痛え。なんで3日も続けて出してんのに、こんなんなっちゃうんだよ。自分の高校男児としてのポテンシャルなめてたわ・・・。
机に突っ伏してもう本当に動けない。少しの刺激でもイってしまいそうだ・・・。
マジで拷問だ、こんなの。
「樫村?ひどいの?もうすぐ授業終わるから、頑張んなよ」
「・・・うん」
名取、俺、お前の好きなヤツの事考えてこんなんなってんのに・・・ほんと最低だ。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったと同時に名取が席を立ち、走って教室を出ていく。
しばらくして名取が戻ってきて、その後ろに榛の姿が見えた。
名取、榛を呼びに行ってくれたんだ。どこまでお人好しなんだよ、マジで。
「榛・・・」
すぐ側まできた榛のシャツの袖を掴んだ。
・・・が、榛がくるっと振り返り、俺に背を向けた事によって掴んだ袖が手の中をすり抜ける。
いやだ。俺がこんなんなってんのにほっとくなよ・・・。あんなに好きだって言ったくせに。
視線が榛の背中を追う。
榛は名取に歩み寄り、彼女の手を取って何か言っている。
照れた様に笑顔になる名取。
ズキン、と確かな音を立てて胸が痛み出す。
早く俺に触って欲しい。
俺以外、触らないで欲しい。
さっきまで名取に罪悪感しかなかったはずなのに、今はどうしようもないくらいの榛への独占欲が俺を飲み込む。
・・・ほんと、最悪だ。
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