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第48話 束縛王子 1
それから二日間、熱は下がらなくて、寝込んだ俺を心配した榛が泊まり込みで看病してくれた。
昼は部活へ行って、帰って来てからはずっと俺のそばにいて・・・
好きなヤツがずっと一緒にいて、正直俺は何度もエッチな気分になったけど、榛は手を出してきてくれなかった。
別にいいけどな!どーせチンコも多少痛かったし、ケツも痛かったし!
・・・・・・・・・
結局、熱が下がった後も、榛とはそれ以上何も無くて、大晦日の夜に会う約束だけした。
『あきー?ごめんね、ほったらかしちゃって』
大晦日、榛のアパートへ向かう途中で母から電話がかかってきた。
「別に。いない方がうるさくねーし」
『そう?お父さんもこっちに先に来るみたいだから、もう少しひとりでなんとかしててね。あ、4日には帰るから』
「うん」
『ひとりだからって、彼女とか連れ込んで好き放題しないこと!わかった?』
「しねーよ」
・・・彼女、いねーし。
『あんたの場合、彼氏か・・・』
「え?なに?」
『なーんでもない。じゃあ、留守番よろしくね』
一方的に電話を切る母。
今、『彼氏』って言った・・・?
聞き違いかな・・・
ふと、母が何か勘づいているんじゃないかと思ったけど、なんだか恐ろしいので、聞き間違いだ!と自分に言い聞かせた。
アパートへ着いて鍵を開けて中へ入る。
なんか、久しぶりの気がする。ちょっと緊張するな・・・。
「あき、おつかれ」
「おつかれ・・・って部活じゃねんだから。なんだよその挨拶」
「そーだね、なんか癖で。蕎麦食える?」
「食う」
「じゃあちょっと待ってて」
榛がキッチンに立って、お湯を沸かし始める。
俺はリビングに座って、年末のお笑い番組をテレビで観ながら、チラッと榛を横目で見る。
・・・あれからキスひとつしてこないのは何故だ。
好きって言ったり嫌いって言ったり。ドスケベな事してきたと思ったら、今度は放置か?
やっぱり情緒不安定なのか、こいつ。
それともなんだ、それがモテる男のテクってやつなのか?
やらしい気持ちになってんのは俺だけ?
榛だって、欲しいって言ってたよな・・・?
「できたよ。あき運んで」
「あ、うん」
どんぶりが二つのせられたトレイを榛から受け取る。
手が少しだけ触れ合って、なんだかドキドキしてしまう俺。
小学生か!これくらいでトゥンクしてんじゃねーぞ自分!・・・ああ、でも、これが恋ってやつか~・・・・・・悪くない。
並んで蕎麦を食べながら、テレビを観て・・・イヤ、これはこれで悪くないんだけど、なんだろう、・・・イチャイチャしたい。
「あ、あの榛、く・・・」
「あき、正月じいちゃんとこ行かなくていいの?」
「え!?ああ、うん。遠いし、留守番」
くっついていい?って聞こうとしたのを、榛の言葉で遮られてしまった。
「そっか。俺も家帰んねーし、一緒にいられるね」
「え!?・・・うん」
一緒に・・・いれるんだ。やべ、嬉しいかも。
「あの、榛、ちょっとだけ・・・」
「ちゃちゃっと片付けるから、テーブル拭いといて」
「・・・うん」
榛が空になった食器をトレイにのせてキッチンへ行ってしまう。
・・・タイミング悪。イチャイチャしたいのに、どう切り出せばいいのかわからない。
悶々としながら、ウェットティッシュでテーブルの上を拭く。
「あき、拭き方雑すぎ!」
「ちゃんと拭いてるよ!うるせーな」
力任せにテーブルをゴシゴシ拭いている俺の手に、背後から伸びてきた榛の手が重なる。
「ちゃんとさぁ、こうやってテーブルの縁も拭けよな」
榛の息が耳にかかって、首の辺りがゾワゾワする。
なんだよ~、こんなん、後ろから抱きしめられてるみてーじゃん!
「あき、聞いてる?」
重ねられた榛の指が、俺の指の間に滑り込んでぎゅっと握られる。
「あ・・・」
「ねえ、聞いてんの?」
耳元で囁かれて、心臓が壊れそうなくらい大きな音を立てる。
「は・・・る、あの・・・」
「ちゃんと拭けよな。ガキじゃないんだから」
スっと榛が離れて、またキッチンへ戻って行った。
え、もう、なに!?
なんなんだよ~・・・
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