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第50話 束縛王子 3
俺が言うことって、狡いの!?
どう言えばいい?
「じゃあ・・・榛と一緒にいたい。振られたと思ってたけど、またこうやっていれるの嬉しいから」
「・・・マジでドMだな、あき」
榛に手を引かれて、参道を人波に逆らって歩く。
「え、おい、お参りは?」
「どうでもいい。別に神様なんか信じてねーし」
「はあ!?」
「今の俺の望みは、あきにしか叶えらんない事だから」
俺にしか叶えられない事?なんだ?
アパートに戻って、玄関のドアを榛が乱暴に閉める。
「これでまず一個叶った」
「何それ。家帰りたかったのかよ」
だったら初詣行こうなんて言わなきゃいいのに。
榛は、はあ、と溜息を吐いて腕を組んでドアに寄りかかり、呆れたように俺を見下ろす。
「にっぶ。わかんねーの?さっき あき、ちょーエロい顔してた」
「し、してたわけねーだろ!」
「してた!あんな顔してるあき、他の誰にも見せたくない」
「だから帰ってきたのか!?」
つーか、一万歩譲って俺がエロい顔してたとして、誰かが見たって何もならねーだろ!マフラーで顔半分くらい隠れてたし!
「それに、また誰かに触られるのやだ。あきが汚れる」
「汚れるって・・・」
「汚れるだろ。既にデコにバイ菌つけられたじゃん」
「でこ・・・」
額に手を当ててハッとする。
もしかして、松田に触られたこと?
「あき俺が好きなんでしょ?だったらもう二度と誰にも触らせんなよ」
「わっ・・・」
榛が急に距離を詰めて来て、後退った俺は玄関の段差に足が引っかかり尻もちを着いてしまった。
投げ出した両足に榛が跨ってきて、両腕をがっちり掴まれる。
「誰にも触らせない。わかった?」
怒った様な瞳で覗き込まれ、うん、と答えるしかなかった。
「俺以外と話さないでって言ったら?」
「無理だろ」
いくらなんでも、さすがにそれは、うん、とは言えない。
「あきに手錠かけて繋いでいい?」
「はあ!?」
カチャン
・・・え
「ダメって言わないから」
「は?え?つか答える時間無さすぎねぇ!?」
「そんな事ないよ。一秒もあれば答えられるだろ」
「つーかどっから手錠出したんだよ!四次元か!?」
「至って普通のポケットから出したよ」
持ち歩いてたって事!?こっわ!
自分にも手錠をかけて、ふたりを繋げる榛。
アレ、でも俺も榛も左手に手錠がかかってる。
「おい、どうせ繋ぐなら反対の手だろ」
「ん?ああ、いーのコレで」
???
榛は立ち上がって俺の体を引き上げ、背後に回り込んでくる。
手錠をはめられた手に榛の指が絡まって、ぎゅっと後ろから抱きしめられた。
「ね?同じ手だと、こうやってくっつける」
「なるほど」
そういう事か・・・。脳みそのムダ遣いの気もするけど・・・。
「・・・じゃねえし!どーすんだよ!こんなんじゃトイレも行けねーじゃん!」
「トイレ、手伝ってやるから安心しろよ」
「てつ!?い、いらねーよ!外せ!」
「外して欲しかったら、色仕掛けでもしてみてよ。俺を落とせたら外してあげる」
背後にいる榛の顔を見るのが怖い。
きっとあの歪んだ顔で笑ってるに違いない。
ああ~。なんでこんな奴、好きになっちゃったんだろう・・・。
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