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第31話【夢 3】
病院の帰り、俺はたまたま街中で鷭を見掛けた。
午後から出勤の予定だが、まだ時間はある。せっかく会ったのだしと、少しだけ話し込むことにした。
公園のベンチに座り、鷭はホットココアを飲んでいる。俺はブラックの缶コーヒーだ。
「この前はありがとね~? いやぁ。麒麟もたまには役に立つ~! お礼に、リビングデッド専用保険で何かオススメのやつ、まとめておくね!」
「ム……」
おそらく、病院に連れて行った時のことだろう。それはいいが、その『たまには』という言い方が気になる。こう見えて、俺はお前のノルマ達成にそこそこ貢献しているぞ?
だから何となく腹いせに、今朝見た夢の話を振ってみた。すると女はそういう夢の話が好きなのか……一番真剣に話を聴かれたではないか。ちょっと気分がいい。許そう。
話し終えると、鷭は腕を組んで唸り始めた。
「う~ん……複雑だよねぇ」
「『複雑』?」
鷭も鷭で、また予想外な反応だ。
鷭は俺を見ないで宙を仰ぎ、説明するように続けた。
「だってさ? その時の麒麟は人間としてそこに居たわけじゃない? でも、今は違うでしょ? だから……リビングデッドにしちゃった張本人っぽい私が言うのもなんだけど、複雑なのかなぁって」
「……ム?」
「だ、だから! その……夢に見るくらい、気にしてるってことなんじゃないの?」
――何をだ?
鷭の言いたいことが、いまいちよく分からない。小首を傾げて鷭を見ていると、調子が狂うわねみたいな顔をされた。それすらもよく分からない。
鷭は何故か、俺がリビングデッドになったことへ負い目を感じている。俺が決めて、俺が選んだというのに……だ。
だが、俺がリビングデッドになったこととその夢の関連性が分からない。
「分かんないならいい!」
ついには話を切られてしまう始末。
腑に落ちない俺を置いて、鷭が立ち上がる。そして数歩歩き出し、クルリと振り返った。
「麒麟」
「何だ」
「もしも、もしも……嫌になったら、いつでも相談して。ちゃんと聴くから」
「何をだ」
やはり鷭の言っていることが分からない。
「分かんないならいい!」
だからこそ素直な姿勢で訊き返したのに、鷭はムッとした顔のまま立ち去ってしまった。今、真面目な話をしていたのではなかったのか?
「まるで青天の霹靂だな」
誰に言うでもなくそう呟くと、その言葉は寒空の下でとけていった。
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