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第2話
「だ、だから! こう見えて耳まで入れれば170いくんだぞ」
お決まりの台詞が返ってきた。俺は吹き出すのを堪えて、意地悪く笑う。
俺は思わず、ピノの耳に手を伸ばした。
「本当か? 本当に170あるのか? 触って確かめさせろ」
「え。俺の兎耳さわりたいって? いいぞお。でも、やさしくやってくんないと、俺、俺、あうぅぅ…」
俺が耳に触れると、ピノが声を漏らした。
まぁ……買い忘れても仕方が無いと思うのが本音だ。
急遽、安売りしていると朝に聞いて、買ってきたらどうかと俺が提案しただけで、別に本日絶対に必要な食材では無い。
この店の料理は、メニューもあるが、テオさんが気分で調理してくれる事もあるから、俺はその日食べたいものを適当にリクエストする事があるのだ(賄い狙いだ)。
「どうかした?」
そこにウィルが顔を出した。俺はポケットに手を入れて、オイルライターを弄りながら笑ってみせた。
「まーたピノが、買い忘れ」
「また? そんなに買い忘れた記憶は無いんだぞ!」
ピノは不服そうである。実際、別段ピノは買い忘れが多いわけではない。単純にからかうのが面白くて、俺の口から出てきただけだ。
「ウィルが買いに行ったら、おまけしてくれそう。大量に安売りしてくれそうだな」
続いて俺は綺麗な体躯をしているウィルを見た。
「お店の人を味見するのも悪くないかもしれない」
ビッチっぽい発言を返してきたウィルは、表情こそ無表情である。だが別段怒っているわけではない。これが普段のコイツである。確かに色気はあるのだが、どちらかというとクールで清廉に見えるから、ウィルのビッチ発言を聞く度に俺はドキリとする。
「ま、ポトフが食べたいのは俺だから、サボリがてら――じゃなかった、ちょっと気分転換……も、違うな。ええと、俺が買いに行ってくる。感謝しろよ」
俺は横柄にそう告げ、外套を取りに店の奥に向かった。
そこには簡単な荷物や服を置く棚がある。
俺はかけておいたコートを羽織り、マフラーを首に巻いてから、手袋をはめた。
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