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第4話
真っ直ぐな視線をこちらに向けたまま、雪弥は動きを止める。
一気に嫌な気分になったのだろう。俺は慌てて首を横に振った。
「いや、ごめん、雪弥が嘘を吐いてるって思ってるわけじゃないんだ。ただ、後から思い出したって事もあるんじゃないかと思って」
「……ん、別に大丈夫。本当だよ。俺はあの日、あいつと喋ってないんだ」
柔らかく笑んだ雪弥は、再度俺の口腔を貪った。
そうだ。もうあいつはこの世にいないけれど、俺にはずっと雪弥がいるんだ。
「早く、続き、して……」
か細い声でおねだりをされた俺は「バレないように、静かにな」と悪戯っぽく笑って雪弥をベッドに横たわらせて、衣類を丁寧に剥がしていく。
実は今までも何度か、雪弥の母親がいるこの家でセックスをしたことがある。このスリリングな状況と、雪弥が甘い声を必死で我慢する姿がたまらなくて、なかなかやめられそうにない。
「んっ、ん――……」
敏感な場所に口付けていってジワジワと快楽の隅まで追い込んでいき、焦らされて甘い蜜を垂らす性器を口腔で捕えれば、雪弥は自分の手の甲を口に当て、ビクンビクンと腰を跳ねさせた。
「あぁ……っん……」
雪弥は両唇をギュッと噛み、大きな動作はしまいと必死に堪えている。
俺は唇でそこを締め付けながら手も使って上下に扱いた。
雪弥の先走りと俺の唾液でトロトロになっている足の間を苛めぬく。
先端を舌先で割るように押し入れると、雪弥は息を呑んで背中をのけ反らせた。
「――っ……!」
「雪弥、可愛い」
一旦そこから口を離した俺は、奥の方もほぐしてやろうと雪弥の左足の膝の裏に手を入れ、そのまま足の付け根まで掌を滑らせた。
白くて滑らかな肌。そして内腿にポツンと一つだけある黒子。桃の表面を優しく撫でるように触れ、何度も往復させて慈しんでいると、雪弥は足を動かして起き上がり、俺の猛ったものに手を添えた。
「俺も……する」
「え……無理しなくていいんだぞ」
「無理なんか、してない」
さっきまで蕩け切った表情をさせていた雪弥だったが、急に冷静さを取り戻したように手際良く俺のズボンの中から張り詰めていたものを取り出し、躊躇なく口に含んだ。
意地を張っているようにも見えたが、フェラは苦手なのに自分のために懸命に首を上下に振ってくれているのを見ると何も言えなくなる。
「ん……雪弥、上手だよ」
「んっ、む……んん……」
先走りでグショグショになっている雪弥のソレから液体を指で絡め取り、後孔につぷりと割り込ませた。
中の襞を広げるようにくるくると指を回すと、雪弥の首と舌の動きは減速していき、3本に増やした指を奥で折り曲げた瞬間、雪弥は顔を上げ、太ももを震わせながら欲望を放った。
余韻に浸る雪弥にキスを落としながら仰向けにし、自らの熱い昂りを当てがって腰をゆっくり落としていく。
隙間なく埋め尽くされ、繋がった体を確認した俺はホッとして雪弥の顔を見る。
雪弥は生理的なのか、それとも他の何かなのか、瞳にジワリと涙を溜めていた。
「どうした、痛いのか」
「ん……」
唇を結んだまま、何度も首を横に振っている。
ならどうして、と口を開こうとしたら、雪弥はまるで祈るように告げた。
「俺を、見て」
「……」
「ちゃんと、俺を見て」
「見てるよ」
「そうじゃなくて、ちゃんと」
雪弥は、不安なのだろう。
毎年2月、雪弥は情緒不安定気味になる。
大切な人を失った悲しみ。そして、俺があいつに一時期恋をしていた過去は変えられない。でも今の俺の愛する人は雪弥だ。この気持ちに嘘偽りはない。
「……ちゃんと、見てるよ、雪弥」
「あ……っ、……ッ」
「愛してる……ちゃんと、愛してるよ」
「……ひ、ぅ……」
言えば言うほど、腰を揺らせば揺らすほど、雪弥の目からは壊れた蛇口のように涙が溢れ出て、眦から頬を伝ってシーツにシミを作った。
雪弥は声をしゃくり上げながら俺の首の後ろに手を回し、腰に両足を巻き付ける。
俺も最後の追い上げのために、より抽挿を激しくし、そのこぼれ落ちる涙を舐めとった。
――どうか雪弥が、ずっと幸せでいてくれますようにと願いながら。
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