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第15話【義賊との出会い 三】

 初対面の相手に何を話しているのだろうと、どこか冷静な自分がいた。そのことに気付いていながら、ステラはあの日見たビジョンを義賊に話す。 『なるほどな……』  高価な椅子に腰を下ろし、ステラの正面に座った義賊はそう呟き……顎に手を当てる。 『王サマが死んだ後、傷心した王妃サマに取り入って国を乗っ取る……にわかには信じられねぇが、精霊が絡んでるってんなら話は別だ』 『信じてくださいますか……っ?』 『当然』  不安げに見つめるステラへ向かって、義賊は快活に笑ってみせた。 『アンタがウソを吐くとは思えねぇ。ましてや、精霊だなんだって話は直接精霊に会った奴しか知らないだろうからな。信用に足る話だ』 『……っ、あ、ありがとう、ございます……っ』  誰にも告げられず、数年もの間そんな大事を一人で抱え続けたステラにとって……義賊の言葉は、どこまでも優しく感じる。  安堵した表情を浮かべるステラを見て、義賊はすぐに表情を硬くした。 『――で?』 『……えっ?』 『それをオレに話して、アンタはどうしたいんだ?』  尤もな問いに、ステラは押し黙る。 『アンタからしたら、オレは見ず知らずの他人で不審者だ。んで、オレの瞳を見たら分かるだろ? こっちだって能力持ちだ。どんな能力かは明かしてないうえに、晴れの日じゃないとアンタは能力を発動できない。つまりアンタからすると、この状況は不利だと思わないか?』  義賊の言う通りだ。ステラが持つ能力は晴れの日にだけ力を発揮するが、義賊は違う。雪の日なのに、瞳が赤い。  発動条件が違うということは、能力自体も違う可能性がある。全てを明かしたステラと、自分が【義賊】だということ以外何も明かしていない相手……どう見たってステラが不利だ。  ――それでもステラは、縋りたかった。 『私はどうなったって構いません。けれど……私はどうしても、この国を救いたいのです』  もしも宰相の作る国が幸福に満ち溢れたものだったら……ステラはこんなことを言わなかっただろう。  けれど、ステラが見た国の行く末はあまりにも悲惨だった。  国民に負担させる税を増やし、その金で私腹を肥やした後に王妃とエトワールのみならず若い娘を配下と共に凌辱。その後は独裁政治を行い続ける始末。  ――絵に描いたような惨さだ。  王妃とエトワールを人質に取られている王族想いの国民は何も抵抗できず、ひたすら宰相に搾取され続ける……そんなもの、ステラに許容できる筈がない。 『私にできることは何だってします。だから、だからどうか……お力をお貸しください……っ!』  そこで初めて、ステラは人に頭を下げた。

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