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第20話【現在 十四(義賊との出会い 四)】
冷たい独房で、ステラは体を震わせた。それは寒さからなのか、またはそれ以外の理由からなのか……ステラには分からない。
『貴方を助けたって、何の得もないのですから』
その言葉に、ステラはどうしたって反論できなかった。反論に足るメリットが思い付かなかったからだ。
身を縮こまらせ、ステラは瞳を閉じる。世界が暗くなって、何も見えなくなる感覚に……ステラはまた身を震わせた。
それでも、微かに光を見た気がしたのは気のせいなのか……。そう考える前に、ステラは浅い眠りについた。
頭を下げたステラに対して、義賊は笑みを浮かべていた。
『分かった』
椅子に腰掛け、笑みを浮かべながらも真っ直ぐに自分を見つめてくる義賊へ、ステラは目を向ける。
『オレはアンタの味方でいたい。アンタに信頼されたい。だからアンタの話を全部信じるし、アンタの願いを叶える。……力を貸すさ』
ステラは嘘を吐いていない。けれど【精霊】という共通点があるだけで初対面の相手から全てを信じてもらえるとは、思っていなかった。
願ったり叶ったりで、ステラにとってはどこまでも嬉しい話だが……義賊がそこまでしてくれる理由が分からない。
『どうして……?』
『ハァ? 助けてほしいんだろ? だから、お望み通り助けてやるって――』
『それが、どうしてなのですか?』
自分にとって得体の知れない存在ということは、相手からしても同じ筈。違うのは……ステラにとってはこんなことを話せた相手が義賊だけだったけれど、義賊にとってはその相手が自分だっただけということ。
スノース国の人間は、ほとんどが王族想いだ。信頼しているし、崇拝もしている。けれど、この男もそうだとは限らないし……そもそも、この国の人間なのかも定かではない。
至極当然な問いに、義賊は笑う。
『言っただろ? オレはアンタの味方でいたいし、信頼されたいんだ。理由なんて、それだけで十分だろ?』
『そういうもの、でしょうか?』
『頭が固いな~!』
困惑するステラのことを、義賊は頬杖をつきながら眺める。
『シンプルに考えよう。この出会いは、いいことだ。きっとこの先、アンタの願いは叶う。その為の、いい出会い。……戯れみたいなこの言葉を、信じてみないか?』
いいところだけを抽出したような、綺麗事。願いが叶うという確証はあるのかと問われれば、勿論ない。
――それなのに……気付けば、ステラは笑っていたのだ。
『……義賊様は、お上手ですね』
心を救われ、頼もしいと思えて、信じたいと願った。
確証は無いけれど、根拠も何も当然無いけれど……ステラは目の前にいるのが義賊だからこそ、信じたい。
微笑むステラを見て、義賊は肩を揺らして笑う。こんな風に誰かと笑い合ったのが懐かしくて、ステラも肩を揺らして笑った。
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