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第21話【現在 十五】

 晴れの日がいつ来るのか、それを教えてくれる義賊とは会えない。だからステラはいつ晴れるのか、分からなかった。  けれど、知ってしまう。 「罪人、外へ出ろ」  自分を呼びに来た青年の姿を見た時に……青年の未来が見えてしまったから。  晴れの日に外へ出たのは、幽閉された時以来だ。頭の先から爪先まで、余すところなく日の光を浴びたかったステラだが、それは許されない。  顔は白い布で覆われ、俯くように指示をされる。顔を上げたらその場で何をされるか……ステラは想像するだけで背筋が凍りそうだった。  そんな周りが一切見えない状況だけれど……どこへ向かわされているのかは、想像に難くない。 「来たぞ……っ」 「あれが、王家に忍び込んだ盗賊かい……?」 「えらく細いな。……身軽に動く為か?」  耳に入ってくる声で、ステラは確証を得てしまう。  ――自分は今、処刑台に連れていかれているのだろうと。  罪人の処刑が行われるのは、独房から少し離れた場所。処刑の見学はどの国民にも許されている。耳に入ってくる声は、見学に来た国民達の声だ。  雪を踏みしめ、ステラはゆっくりと歩く。処刑台へ続く階段を俯きながら上り、息を吐いた。細く白い息がたなびくと、ステラは処刑台の中央に座るよう指示される。 「斬首か……」 「王家の宝を盗もうとしたんだ、当然だろう?」 「だけど盗賊相手に死刑って……極刑すぎると思わない?」  どうやら、国民達はステラのことを【王家に忍び込んだ盗賊】だと思っているらしい。  ここで顔を上げたら、きっと国民はステラの顔に気付く。王女であるエトワールと瓜二つな、ステラの顔に。  だが当然、それは許されない。 「王族を脅かした罪人は、宰相である私てずから処罰いたしましょう」  罪人だと言われるステラの首を刎ねようとしているのが、あの宰相だから。  抵抗しようにも、必要最低限未満の食事だけを与えられ続けたステラは、頭を上手く働かせられなかった。きっとそれすらも宰相の思惑だろうと、ステラはぼんやり思う。  両腕を後ろ手に拘束されているステラは、座ったまま下を向き続ける。打開策を思案するけれど、ここで動けばすぐさま宰相に殺されるだろう。何より、ぼんやりする頭では何も思い付かない。 「死刑執行人にやらせないのか……?」 「宰相様はきっと、王様達を脅かした罪人が許せないのよ……」 「人を殺すのは仕事でも嫌だろうし、執行人のことも思ったんじゃないか?」  聞こえてくる声で、宰相がいかに信頼されているかを痛感する。  ――国民が思っている通りの男だったなら、どれだけ良かったか。 「その身を以て、罪を償いなさい」  頭上から降り注ぐ冷酷な声に、ステラは唇を噛み締める。心の中で宰相は、ほくそ笑んでいるに違いないと……腹立たせながら。  一瞬だけ、ステラは処刑台から遠くへ目を配った。  ――すると、一人の国民が目に映る。  ――そこでステラは、近い未来を見た。

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