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第8話

 それから数日。  相楽は本当に俺に弁当を持ってくるようになった。しかも、嫌いなものが無いのか確認までし、栄養バランスには気を遣いつつも俺の好物ばかりの美味い弁当。  前より断然昼が楽しみになっていた。 「はーぁ、オレはコンビニなのにフジは愛妻弁当かぁ」 「っ、馬鹿、なにが、あいさいべんとうだ」 「はいはいがんばれがんばれぇ」  相楽と昼を一緒にした初日以降、なぜか桐が俺を見る目は生温いものに変わっていて少し気持ち悪い。時々可哀想なものを見るような目で見てくるのが1番腹が立った。 「にしても、なぁんか今日おっそいねぇ」 「......そうだな」  時計をみると、普段ならもうここに来ていてもおかしくない時間だった。  少し不安になり、探してくる、と桐に言って校舎内に入った。  相楽のクラスは1Sだったはず。そこから屋上にくるためのルートを確認してみるが、すれ違うことは無かった。  もしかしたら襲われてるのかも、と思いつき空き教室を探す。 「っやだ、やめてっ離してください!」 「あぁ? オレら、藤宮の野郎にイライラしてんのぉ。おまえさ、あいつの女なんだろ? 代わりにボコらせろよ」 「マワしてもいいんじゃねぇ?」  人気のない廊下に来たところで、相楽の必死な悲鳴が耳に届いた。ギャハハ、なんて、汚い笑い声まで聞こえたその教室のドアを迷いなく開ける。 「よぉ、楽しそうなことしてるな」  あ゙? と言ってやれば、襲っていた雑魚共がヒィっ、とビビってから自らを奮い立たせるようにぐっと拳を握った。 「っ、最近腑抜けてるっつー噂の藤宮じゃねぇか。なぁ、こいつの具合どーよ?」  腑抜けてる相手にビビってるお前は何なんだ、と思いながら、相楽の前髪をぐっと引っ張り上げやがったそいつに迷わず蹴りを入れる。 「汚ぇ手で触んな」  追い打ちに、仰向けに倒れたそいつの腹をぐぐぐ、と踏み込んでやればよっぽど苦しいのか喘ぐように声を漏らした。  それを皮切りに、他のやつも襲いかかってくる。とはいえ雑魚は雑魚。ほんの1分ほどで全員伸してしまった。

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