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第11話
食堂で桐と別れ、相楽と一緒に部屋に帰る。
本来なら2人部屋で桐と同室だが、空気を読んで他のダチの所に泊まるらしい。
ありがたいような、気恥ずかしいような。
カチャリと扉が閉まり、お邪魔します、と小さく呟いた相楽が靴を脱いで控えめに中に入っていく。
部屋は散らかっていないし、見られて困るものもなかった、はず。
「わぁ、綺麗ですね」
「......そうか?」
「僕、片付け少し苦手なので」
えへへ、と眉を下げて笑う相楽。少し照れくさそうにしているのが可愛い。が、直視は難しいので自然に目を逸らした。
「何か飲むか」
「あっ、......じゃあ、お茶で」
食器棚から俺のものと、まだ1度も使われたことのない客用のグラスを出してお茶を注ぐ。他に何か出せるものはあったか、と菓子を確認するとポテチがあったので一応それも机の上に出しておく。
とりあえず相楽が座っている隣に、適度な距離で腰掛けてテレビをつけた。
「先輩の同室者って、桐生先輩? でしたっけ」
「ああ」
「そっかぁ......普段、こうやってお喋りしたり、してるんですか?」
ちろり、と覗いてくるその目は少しだけ潤んでいる。
付き合ってから分かったことだが、相楽は意外と嫉妬深く、特に桐については頻繁に聞かれる。
心配しなくとも俺の中で1番は相楽だというのに。
「話はしてる。けど、桐はただの友達だ」
「......先輩、なんで友達の桐生先輩はあだ名なのに、恋人の僕は苗字なんですか?」
じりじりと近づいてきている相楽。なんでと聞かれても、恥ずかしいからだ。サヤ、なんてたった2文字だと言うのになぜか俺の口は上手くそれを発音できない。
しかし、だからといって正直に恥ずかしいからだなんて言えるわけもないので、言い訳を考えながら少しずつ後退していく。
が、それもすぐに終わり、タイムオーバーとでもいうようにトス、と音がして、俺の腰がソファの手すりについたのがわかった。
逃げ場がなくなった。
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