それじゃあ行ってきますね、と制服を来て出ていったさやを見送り、1人ベッドの上でもぞもぞと動いてサイドに置いておいた俺の携帯を開く。 　いくつかメールが来ていたが、それを見るより先に桐に電話をかけた。 『はぁい、どしたのフジー』 　いつもの気の抜けたような声が聞こえ、なあ、と一言声をかけると桐が噎せた。 「どうした」 『ゲホッ、......えー？　んーとぉ、』 　処女喪失、おめでとう？ 　瞬間、反射的にぶちりと通話を切る。 　先程まさかとは思ったばかりだけれど、そのまさかだったらしい。桐や、さやのクラスメートたちには、もう俺が抱かれることが分かっていたのだろう。だからあんな目で......。 　さらにしょっぱい気分になっていると、桐から電話がかかってきた。少し躊躇してから出てやる。 『とりあえず、どんまいー？』 「......やっぱり、お前は、分かってたのか」 『だって相楽クン、完全にフジのことそーゆー目で見てたしぃ』 　桐のその言葉が、しょっぱいような、けど少し嬉しいような。 『ま、別に嫌じゃないならいいんじゃなーい？』 「............受身は、辛い」 　嫌ではないけど、圧倒的に気持ちよさの桁が違う。俺だってさやを可愛がりたいのに、どんどんグズグズにされていくあの感覚が俺にはどうも苦手だった。 　確かに最中のさやは可愛くて少し格好良かったし、幸せだったけども、だ。 　果たしてさやの方が上手いからなのか、それとも俺が思いの外快感に弱かったのか。......男としては悔しいが、前者だと思いたい。 『いずれ慣れるでしょー。あ、今日は今から来んのー？』 「......行く」 『おっけぇ、途中絡まれないよーにねぇ』 　腰痛いでしょー、なんて余計なお世話をふっかけられるも、反論する暇もなくさっさと切られる。桐のその言葉に舌打ちしつつ、準備するかと立ち上がればジン、と腰の辺りに鈍く響く。 　その痛みに少しだけふらりとよろめきつつ、下に散らばった服を集めて風呂場に向かった。