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ちゃんと快楽を教えてやる

 汗で貼り付き気味だったところを力技で脱がされて、低く設定されているらしい室温に、今までのとは異なる震えに襲われる。 「この部屋では何も履かせない。寒かったら上だけ着ていいけど、下は脱いどけ」  いきなりの王様発言。返事は? と耳朶を喰まれて、あう、と零れた声だけじゃお気に召さなかったらしい。シャツも脱がされて、自分も裸になった健吾さんに、浴室に連れ込まれた。  泡で出てくるタイプの石鹸を手に取り、撫でるように手のひらで全身を探られる。耳の後ろを指先でつつかれただけで肩が戦慄き、首筋でのけぞり、脇の下に入れられたら涙が滲んだ。 「あ、ん……んんっ」  くすぐったさのすぐ先に快楽がある。そんなの今まで知らずにいた。乳首の周りもゆるゆると洗われて、じっくり顔を見られているのが観察されているようで、それがますます興奮させる。すぐに立っていられなくなってしがみ付こうとしたのに、泡で滑って上手くいかない。しょうがないな、と健吾さんが一度流してくれて、懸命に腰に腕を回す。少し前屈みの俺の胸の下で、腹に着きそうなくらいに健吾さんが高ぶっている。  これは、自分からするべき?  そろりと窺うと、見下ろす唇が開いて、舌先で唇をぺろりと舐めた。  舐めろってこと、なのかな。  勿論そんな経験はないけど、どうすれば気持ちいいのかは判る。全く同じとは限らねえけど、気持ち悪くはないはず。  思い切ってもう少し掴まる場所を下げて、滑らかな先っぽにキスをした。ぴくんとお辞儀でもするみたいに反応してくれて、大きく口を開いて中に含んでいく。いっぱいに開いてもぎりぎりで、口の端が切れそう。根本までは無理で、手も使いたいけど、掴まってるからそれも無理。出来る範囲で舌を絡めて吸いながら、頭を前後に動かしてみる。頭上から感じられる呼気が弾んでいて、感じてくれてるって判っただけで嬉しい。  突き出した尻を撫でていた指が、不意に中に入ってくる。泡を付けているのかスムースに挿入されて、すぐに両手の指を使って左右に広げられていく。入り口を何度も浅く出入りする動きに合わせて自分も動いてみたら、上も下も健吾さんに封じられて貫かれているっていう異常な光景に、脳内に麻薬でも出てきているのかっていうくらい頭がぼうっとしてくる。  指が、更に増えた。痛くはないけど、初めての時同様異物感というか圧迫感が凄い。指だとまだ入り口だけなんだけど、この後健吾さんを受け入れることを考えただけで、ちょっと後込みしそうになる。  広げようとしていた指の動きが変わり、緩やかにさするだけのものになる。楽だし、なんだかちょっと気持ちいいと言えなくもない。それでちょっと力が抜けて、口の方に専念していると、だんだん変な感じがしてきた。  あ、あれ? まだ俺のに触られてないのに、出したくなってきた!  むずむずがどうしようもないくらい大きな波になって襲ってきて、舌を使うどころじゃなくなってくる。 「んふ、ぁふ、う、んーっ」  出したくて、でもどうも出来ないもどかしさに、自分で腰を振る。そうしたら健吾さんも腰を使い始めて、先っぽが上顎をぬるぬる滑ってとんでもなく気持ちいい。 「喉、開いとけよ」  ぐいぐいと奥まで腰を押し込まれて、自然に首の角度が変わって受け入れ体勢が出来上がる。それを待っていたかのように、激しい抜き差しに変わり、最後に喉奥に叩きつけられたかと思うと温い飛沫が食道を流れ落ちていく。 「いい子だ。残すなよ」  ふっ、ふっと浅く息を吐きながら、愛玩動物でも見ているような顔で見下ろされて、懸命に嚥下した。腰を引くのに合わせて先っぽも舐め上げると、また「いい子だ」って頭を撫でられる。あっさりと指を抜かれて、下半身の疼きは最高潮のまま放置。自分で始末したら叱られそうだから、立ち上がって抱きつき直してから腰を押しつけた。  そうでなくても足が震えて立っているのも危うくて、滑って転んだら格好悪すぎる。縋り付いているのも惨めだけど、抱き付いてるって変換すれば問題ない。 「健吾さ……俺も、イきたい」  高さが合わねえから腿に押し付けるだけになってしまい、満足な刺激が得られない。  そんな俺を眺めながら、健吾さんはシャワーに手を伸ばして二人一緒に温い湯で流すと、同じバスタオルでまとめて拭いてくれた。  ベッドまで腕を引かれて、腰掛けるように促される。この間と同じようにカラーボックスをがさごそやってたかと思ったら、塗り薬のようなチューブと、奇妙な器具が出てきた。 「一応殺菌しといたから大丈夫だろ。お前専用だぞ、喜べ」  チューブは初めて開封されたようで、キャップの後ろで口の覆いを破いてから、中のゼリーを絞り出して、器具に塗り付けている。  ステンレス製なのか、ぼこぼこと不揃いな小さな突起が並んだ棒の先が曲がっていて、輪っかが付いている。俺のためって言われても、何に使うのかどうするのかさっぱり用途が不明だ。  ただ、健吾さんがわざわざ用意したという事実に心が浮き立ち、股間も萎えないままに見守っていた。 「ひとみ、いい子だ……」  俺の前に、まるで騎士のように健吾さんが膝を突く。その目を見て、それから口が笑みを刷いているのを見たら、そこから視線が動かせない。放って置かれた中心をぐっと握られて、鈴口がぱくんと開く。それでようやくびくりとしたら、その開いた部分に冷たいものをあてがわれた。 「っひ、やだ……っ、なにこれ、」  声が引き攣って、俺の中に器具を差し込んでいく腕をぎゅっと握る。しっかり筋肉の付いた腕は俺ごときの力じゃびくともしなくて、ゼリーの滑りを借りてじゅぷりと沈んでいく。 「そんなに太くはないから……ああ、ほらちゃんと収まった」  普段液状のものを吐き出すだけのところへ、強引にまっすぐな棒を入れられてしまった。小さいのと大きいのとランダムに並んだ突起が狭い道につかえて、ぎゅうぎゅうに圧迫してくる。それだけで苦しくて仕方ないのに、先刻の刺激でびんびんになっている先端からぐるりと輪を通して固定された。 「やっ、何これ、健吾さんっ」  ずっと体内に燻ったままの熱を無理矢理堰止められている。欲しいのはもっとちゃんとした刺激だったのに、これじゃあもうイくこと自体が不可能だ。 「言ったよな、好きにしていいって」  言った。言ったけどっ。言葉は声にならずに、そのまま背後に押し倒される。 「もっと、ちゃんと快楽を教えてやる。快感をこの体に刻み付けて、もう俺以外じゃ満足できなくなるまで」  そんなことしなくても、もう心は堕ちているのに……  思っても、それじゃ健吾さんには伝わってない。ぐいっと太股の裏に添えられた手に腰から下を持ち上げられて、枕を差し込まれてその姿勢をキープするように言われた。  逆らわれるなんて微塵も考えていない。低く命じられて、その通りに体が動く。  今度は前と同じボトルを取り出して、更に腰の下に膝を入れられて、自分の後孔に指が差し込まれるのを見るように促された。  ちゅぷん、と長い指が沈み、浴室で慣らされた口は易々と受け入れていく。すぐに指が増やされて、あの時の再現のようにじわじわと中を撫でられる。次第に腰が揺れて、自分でも抑えが効かなくなっていく。 「んふ……そこ、なんでっ」 「ここ、ひとみのいいトコな」  もう少し直接的な刺激があればすぐにでも吐精できるという感覚が延々と続いて、頭も腰も重だるくなっていく。  器具をはめられた中心はぷらぷらともどかしく揺らめいて、透明な滴がぽたぽたと自分の腹を濡らしていた。 「すっげ涎垂らして、まだ二回目なのに自分で腰振って。この淫乱」 「んーっ」  口も自然に開いてしまうから、時折閉じて唾液を飲まないと喉が痛くなりそうだ。熱は溜まるばかりで吐き出す術がなく、地獄のような快楽に身を委ねるしかできない。 「気持ちいいか」 「い、いい……いい、からぁ……も、イきたいよ」  執拗に同じ場所ばかりイジられて、体勢もきついから涙で視界が曇る。暴力的なほどの悦楽。逃がせない、てっぺんに辿り着けない、解放されないことがこんなにも苦痛になるなんて初めて知った。  それでも健吾さんは許してくれない。汗で手が滑って足が落ちそうになる度、場所をずらして持ち直す。  前回痛いだけだった場所を気持ちよくしてくれてるのは嬉しいけど、これじゃあんまりだ。ひとりで醜態を晒しているのを観察されているような気分になってきて、情けなさに更に涙が溢れた。

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