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第10話 4
祥吾さんと松田さんはビールで、僕はウーロン茶で乾杯をして、鍋を食べ始める。
祥吾さんと松田さんのお皿に鍋の具材を入れて渡すと、松田さんが破顔して言った。
「自分で取るからいいのに。ありがとね、雪くん。君は本当に気が利いていい子だねぇ」
「そうだぞ?松田には自分で取らせておけばいい。放っておけ。それよりほら、雪の皿貸して。雪は、お菓子じゃなく飯をたくさん食べないとな」
「食べてるよ?でもすぐにお腹いっぱいになっちゃうから…」
「…まあ、無理せず食べろ。雪が美味しいって言ってた鶏肉団子、たくさん作ってあるぞ」
「わぁ、ありがとっ。これ、すごく好き!でも、祥吾さんが作った物は、全部好きっ」
「ん…、もっと色んな物作ってやるからな」
二人で顔を見合わせて笑っていると、横から大きな溜め息が聞こえてきた。
「君達…俺の存在、忘れてない?いやぁ〜仲良いよね。甘いよね。ピリ辛味噌鍋を食べてる筈なのに、すごく甘いわ…」
「なんだ、羨ましいのか?おまえ、そこそこ顔はいいんだし、お医者様なんだからモテるだろうが」
「そこそこって何だ。上から言うな。俺はね、顔目当てや金目当てじゃなくて、雪くんみたいに、素直に好きになってくれる可愛い子を恋人にしたいのっ」
ねっ、と僕を見て微笑む松田さんに、僕は首を横に傾ける。
「ホントに松田さん、色んな人からモテそうですよ。僕なんかよりももっといい人から。それに、僕は男だし…。祥吾さんは、僕が男でも関係ないって言ってくれるけど…」
「晴樹、雪はダメだからな。俺の雪だからな。雪…、俺は雪が好きなんだ。男とか女とかじゃなく、雪が好きなんだよ。不安なら何度だって言ってやる」
「祥吾さん…。僕も、祥吾さんだから好き…」
「うわぁっ、もっと甘くなっちゃったよっ。わかった。君達がすごく愛し合ってるのはわかったから、他の話しよう。あ、そうだ。祥吾、おまえ最新作は進んでるのか?」
額に手を当てて呻いてから、松田さんが祥吾さんに話を振る。
祥吾さんは、お皿の中の具材を一気に食べて、松田さんを見てニヤリと笑った。
「すっげー順調。俺にしては珍しく。雪が俺の身の回りのことをしてくれるから、集中してサクサク話が書ける。同じ空間にいるだけで落ち着くしね。俺にとって雪は、幸運の天使だよ」
ビールを取りに行こうと席を立った僕の腰に、祥吾さんが腕を回して、お腹に顔を埋める。
僕はくすぐったくて、祥吾さんの髪に手を差し入れると、身を捩りながら笑い声を上げた。
「や…っ、祥吾さんっ、ふふ…くすぐったいからっ。もう、離してっ」
「君達…、何話してようが、結局そうなるんだね…。もういいよ、思う存分、イチャついて下さい」
「そうする」
「え?」
松田さんが苦笑しながらそう言って、食べることに集中し始めた。
祥吾さんは、僕を自分の膝の上に座らせて、僕の顔中にキスをする。
僕は、後ろにいる松田さんが気になって戸惑っていたけど、祥吾さんのキスが嬉しくて、だんだんと気持ちよくなってきて、祥吾さんの首に腕を回して目を閉じた。
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