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第19話 9

松田さんが、祥吾さんの肩に手を置いて、頰が触れそうな程に顔を近づけて囁いている。 「…祥吾、ちゃんと優しくしてあげたのか?雪くん、華奢なんだからな?理性を飛ばして乱暴に扱うとかダメだぞ?」 「はぁ?おまえに言われなくてもわかってるよ。雪は、俺の大事な宝だ。優しくしたさ」 「じゃあなんで、雪くん元気ないの?あ、もしかして、しつこくした?」 「……した、かも。仕方がない。雪が可愛いんだから」 「あっ、開き直りやがった。ダメじゃん。只でさえ、おまえのはデカいんだから。そりゃあ、疲れるし怠くもなるわ。今日は一日、ゆっくりと…」 「な、な、何の話してんのっ!」 「ゆ、雪っ!」 「わあっ!」 こっそりと聞いていた僕も悪いけど、まさか二人で僕の話をしているとは!しかも、ちゃっかり松田さんに、エッチしたことがバレてるっ。 僕は、祥吾さんのセーターの裾を掴んで、祥吾さんの胸に顔を伏せた。 「ゆ、雪?」 「…祥吾さんの、ウソつき…」 「え?な、何が?」 「松田さんには…声、聞こえないって…言った…」 「あ〜…、ごめん。でも、普通は聞こえないんだよ?晴樹が、地獄耳なんだよ」 「……うそ、だ…」 「え?俺?俺っ、べ、別に、聞こうとして聞いたわけじゃないよ?たまたまっ、トイレに行った時に、ちょっとだけ聞いてしまったというか…、聞こえてしまったというか…」 僕の後ろで、松田さんが慌てて言う。 僕は、松田さんに対して首を横に振ると、そっと顔を上げて祥吾さんを見た。 「…ウソつき。松田さん、酔い潰れたら起きないって言った…。僕の声、松田さんに…っ」 「う、ウソじゃないっ。な、晴樹っ?おまえ、爆睡してたんだろ?ホントは、聞こえてないだろっ?」 祥吾さんが僕の背中を撫でながら、松田さんを鋭く睨む。 「え?あ、そ…うだな。俺、爆睡してたな。き、きっと夢見てたんだな。ごめんね、俺の勘違い。大丈夫だから、元気出して?いつもの笑顔、見せて?ね?」 松田さんが、両手を合わせて僕に何度も頭を下げる。 すごく誤魔化された気がするけど、僕の恥ずかしい声を聞いてないと言うのなら…と、渋々コクリと頷いた。

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