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第23話 13
鞄をプレゼント用に包んでもらって、大きな袋を肩にかけて店を出た。
結構早く買えてしまったから、時間が余ってしまった。祥吾さんに買ってもらったスマホを、たすき掛けにかけていた鞄から出して、少し考えてからまた鞄にしまう。
まだ、祥吾さんの打ち合わせは終わっていないだろう。今連絡をすると、祥吾さんは打ち合わせを放り出して僕の元へ来るに決まってるんだ。すごい自惚れだけど、それだけ愛されている自身がある。だって祥吾さんが、僕をすごく大事にしてくれるから。毎日、「愛してる」と言って抱きしめてくれるから。
僕は、祥吾さんの優しい笑顔を思い出して顔を綻ばせながら、祥吾さんが打ち合わせをしている店に向かって歩き出した。
その店の近くに、本屋がある。そこで時間を潰そうと思い、鞄が入った大きな袋を肩にかけ直して、本屋に入った。
真っ先に新刊のハードカバー本が積まれているコーナーに行く。先週、発売されたばかりの祥吾さんの本が、目立つ場所に平積みされていた。
僕は嬉しくなって、思わず本を手に取った。本を裏返したりペラペラとページをめくってみたりして、一人でにやけていることに気づいて、慌てて本を戻した。
祥吾さんは、恋愛物から推理小説まで幅広く書いている。ここに積まれている本は推理小説で、次回作は、僕と祥吾さんをモデルにした恋愛小説を書くと言っていた。
祥吾さんの本を眺めながら、この本を書いたすごい人が、僕のすぐ傍にいることをくすぐったく思ってクスリと笑う。名残惜しくこの場を離れて、次は料理本が置いてある場所に行った。
いろいろな本を見て回って、僕にも簡単に作れそうな料理本を一冊買った。
本屋を出て、通行人の邪魔にならない場所で立ち止まる。この本屋でそこそこの時間が経ったから、祥吾さんももう終わる頃だろうとスマホを取り出した。
画面をタップして祥吾さんにメールを入れようと操作をしていたら、僕の前に影がさした。不思議に思って顔を上げると、僕と同い年くらいの若い男の人が、僕の前に立って僕を見下ろしていた。
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