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第24話 14

その男の人は、目を見開いて僕を見たまま動かない。 僕は困って、首を傾げて尋ねた。 「あの…何か?」 「…え?」 彼は、一際大きく目を開いた後に、顔を歪めて僕の肩を強く掴んだ。 「おまえ…っ、“なつ”だよなっ?な、んで、こんな所にいるんだよっ!俺っ、心配して…、ずっと捜してて…。よかった…っ、無事でよかっ…」 「え?な…つ?ち、違うっ。僕は、なつって言う人じゃないですっ。人違いです!」 「え?…何言ってんだよっ。どう見たってなつじゃねぇか!だって、ほら…、ここに小さな痣がある…」 彼がそう言いながらいきなり僕の前髪を上げて、額の生え際に指で触れた。 彼の指が触れた途端、僕は大きく身体を揺らしてしまう。慌てて彼の手を跳ね除けて、プレゼントの鞄が入った大きな袋を胸に抱きしめて俯く。僕はガタガタと震えながら、小さく「違う…違う…」と呟いた。 確かに彼が言った通り、僕の額には、小さな痣がある。祥吾さんがいつも、「これを知っているのは俺だけだ」と優しく口付ける場所。 それを、なんでこの人が知ってるの? 記憶が蘇りそうになる時に訪れる頭痛がして、僕はズルズルとその場にしゃがみ込んだ。 鞄を抱きしめたまま顔を伏せて、違う違うと繰り返す。 「おい、なつ、どうしたっ?大丈夫かっ?」 彼が、僕の肩に触れて聞いてくる。 嫌だ。僕に触れないで。僕は君のことなんて知らない。なつ、って言う名前なんて知らない。お願い。早く僕の前から消えてーー。 呼吸が乱れて息が苦しくなってくる。僕の心と身体に限界が来て、意識を手放そうとしたその時、愛しい祥吾さんの声が聞こえた。

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