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第29話 19
「え!幼稚園から一緒なの?すごいねぇ…」
思わず大きな声を出してしまって、僕は少しはにかみながら、祥吾さんと松田さんを交互に見た。
「ホントの腐れ縁だな。高校も大学も同じで、常に一緒にいたな。というか…、俺の友達は晴樹しかいない」
「あー…おまえはそうだよな。馴れ合うのが嫌いだから、俺以外の奴とは、あまり話さなかったよな」
「気が合う奴が一人いれぱ充分だ」
「はいはい。その一人に選んでくれてありがとうございます。というわけで、ごめんね、雪くん。ちょっと馴れ馴れしくしてしまうことがあるけど、許してくれる?」
松田さんが、両手を合わせて、ちょこんと首を傾ける。その姿に笑みをこぼして、僕はコクリと頷いた。
「…ごめんなさい、嫌な態度取ってしまって…。僕、二人が仲良くしてるの、見てて楽しいから好きなのに…」
「雪、俺が晴樹に抱きつかれて喜ぶと思うか?俺が嬉しいのは、雪に触れてる時だけだ」
「…祥吾さん…」
「あ、また始まった。俺、すき焼き食べたらすぐ帰るから、早く始めようぜ。ねぇ雪くん、なんで誕生日にすき焼き食べるか、聞いた?」
お肉の入った大きなトレイを、ガサゴソと袋から出しながら、松田さんが僕を見る。
「聞きました。祥吾さんが子供の頃に、誕生日に何が食べたいか聞かれて、唐揚げでもステーキでもなく、すき焼きが食べたいって言ったって話。それからは、毎年誕生日のご飯がすき焼きになったって」
「そうそう。初めて聞いた時、吹き出しそうになったよ。おっさん臭いことを言う子供だなぁって」
「でもいいじゃないですか、すき焼き。僕も大好きですよ」
「ほら見ろ。雪はおまえみたいに笑ったりしないで、毎年誕生日に好きな物食べれて幸せだね、って言ったんだぞ。おまえも医者なら、もう少し人の…」
「あーはいはい。すいませんでした。もう肉焼くぞ。俺がするから、二人は座ってイチャコラしてろよ」
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