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第39話 5

「祥吾…さん…」 すぐ目の前に、祥吾さんの顔がある。でも翔吾さんの表情は、公園に灯った街灯の影になってよくわからない。 僕が固まってジッと翔吾さんを見つめていると、「…雪」と耳に心地好い静かな声がした。 「祥吾さん…」 僕は祥吾さんに手を伸ばしかけて、戸惑いながら下ろしてしまう。僕が祥吾さんに触れてはいけない。勝手に離れた僕が、祥吾さんに触れていいわけがない。 少し姿を見るだけと思っていたのに、こんなにも近くで会えて、しかも祥吾さんも僕を見てくれている。 想いが溢れて苦しいけど、もう充分だと立ち上がった僕を、祥吾さんが抱きしめた。 「え?祥吾さん?」 突然のことに驚いて、久しぶりの温もりと匂いに、頭の奥がクラクラする。 僕は、暫く心地よい腕に包まれていたけど、顔を上げて祥吾さんの胸を押した。 「祥吾さん…離して。僕に触れてはダメ…」 「なんで?」 「…祥吾さん、怒ってないの?」 「怒ってるさ。一人で悩んで出て行ったおまえに」 「じゃあ、僕の顔なんてもう見たくないでしょ…。僕に怒鳴っていいよ。殴っても…」 「はあ?愛するおまえを殴るわけないだろっ!どうでもいい奴なら怒ったりしねぇよ!おまえを、雪のことが好きだからっ、こんなにも苦しくて怒ってるんじゃねぇかっ!」 「…愛、する…?まだ僕のこと…好きで、いてくれるの?」 「俺は、おまえだけだ。たとえ何年離れていたとしても、想いが変わることはない」 その言葉に、僕の目から次々と涙が溢れ出した。

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