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第41話 7
僕は手を祥吾さんの背中に回し、 肩を震わせて涙を流した。
祥吾さんが顔を上げて、僕を強く抱きしめてつむじにキスをする。
「雪…、おまえが何でそう思って不安になったのか知らないけど、俺は雪を愛してる。雪が傍にいると幸せで毎日が楽しかった。でも、雪がいなくなって、寂しくて寂しくて、俺の心臓が止まって死ぬんじゃないかと思う程、辛かった」
時おりスズっと鼻をすすりながら、祥吾さんが続ける。
「俺、必死で雪を捜したよ。晴樹にも協力してもらって、捜しまくった。それで、やっとこの街にいるらしいってことがわかって、いいタイミングでサイン会の話があったから飛びついたんだ。ふっ、俺、今までサイン会なんてほとんど断ってたのにさ、雪を捜せるチャンスだと思うと、全国の本屋でも回ってやる!って思ったよ」
「祥吾さん…」
「雪の本当の気持ちを教えて欲しい。もう俺といるのが嫌になった?それとも、俺を想って、無理して離れた?もし後者なら、そんな気遣いはいらない。前者だとしたら、俺、死んじまうかもしれん…」
「えっ!いっ、嫌だっ!祥吾さんが死ぬなら、僕も死ぬ!祥吾さんがいない世界でなんて、生きていけないっ」
僕がそう叫ぶと、祥吾さんが勢いよく身体を離した。そして、みるみる笑顔になると、「雪ー!」と叫んで再び強く抱きしめた。
「し、祥吾さん?苦しい…」
「雪っ!今、俺がいないと生きていけない…って言ったよな!そうだ!俺も同じだっ。だから一緒に生きよう。俺の傍で、一緒に暮らそう。俺の傍にいる限り、不安にさせない。悲しませない。必ず守る。だから、死ぬまで俺の傍にいて」
僕を強く抱きしめて、耳元で囁かれる甘い言葉に、僕の胸がポカポカと暖かくなる。幸せが満ちて、胸にこびりついていた不安が涙と共に溢れ出した。
「…祥吾さん…いいの?僕が傍にいても…。僕のせいで、祥吾さん、嫌なこと言われたりしない?」
「はあ?俺は、雪に関することを言われたら、何だって嬉しいんだよ。嫌味なこと言って来る奴は、可愛い雪と一緒にいる俺が羨ましいから言ってくるんだと思ってる。それに、他人にどう思われようが関係ない。全くどうでもいい。雪さえ傍にいてくれたら、それでいい」
「し、祥吾さぁんっ!ぼ、僕も、祥吾さんの傍にいたいっ。祥吾さんが好き!戻ってもいい?僕、祥吾さんの所に戻りたいっ!」
「戻って来い。雪の荷物も何もかもそのままにしてある。もう、絶対に離さないからな。このまま、俺達の家に帰ろう。戻る前に、雪の家族にも挨拶に行こう」
僕は嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなくて、泣きじゃくりながら何度も頷いた。
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