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第3話

俺たちの綱渡りの日々が始まった。 Ωだと知られれば、カイは国に身柄を拘束され、探索プログラムではじき出されたαと否応なしに番にされてしまう。 そして、Ωだと知っていて匿った者は、懲役刑に処せられる。 抑制剤を毎日飲み続ける限り、発情期は抑えることが出来る。 俺は、非合法な手段で抑制剤を手に入れ、カイに与え続けた。 犯罪者になっても良かった。カイと一緒にいられるのならば。 そんなある日、異変が起こった。 いつものようにカイと登校すると、教室が騒めいていた。 「交流生みた?」 「みた、みたっ! オーラ、半端ねぇな?」 「私、αって初めてみたっ! Ωだったら、つがえたのに」 「バーカ、Ωでもプログラムで認められた『運命の番』じゃない限りつがえないっつーのっ!」 「番じゃなくても、恋人にだったらなれるんじゃない?」 「αは何人でも結婚できるし、恋人も、番も持ち放題だもんね」 「背も高いし、かっこいい。あんな素敵な人、初めて」 悪い予感にカイを振り返ると、その顔は見たこともない表情のまま1点を凝視し、固まっていた。 白い肌が仄かに上気し、大きく見開かれた黒目がちな瞳は艶やかに潤み、押さえきれない好意が全身から匂い出ている。 一目惚れをした時って、こんな顔をするんだ。 初めて見るカイの表情に、俺の胸はざっくりと抉られた。 ドクドクと血があふれ出す。 カイの視線の先は、追わなくてもわかっていた。 俺たちのクラスに、やってきた交流生の名は、ムカイといった。 αだけしか通うことのできない特別地区の学園の生徒。 性種によって居住区や生活空間は定められている。 社会にでるまで交わることのないαとβの交流を目的に、年に数回、同い年のαがやってくるのだ。 その日、αの中でも特別優秀で帝王として君臨するムカイ一族の嫡男の登場に、学校全体が浮足立った。

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