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【最終話】第7話(カイ視点)

 ムカイとの新居は、αとその番だけが居住を許された特別地区にあった。  タワーマンションの最上階。  αの生活は、想像もできないようなきらびやかなものだった。 「カイ? 欲しいものはない?」  ムカイは、愛おしそうに俺のうなじを撫でた。  そこには、防護首輪がはめられている。 「カイの意思を無視して、番になるのを防ぐためだよ? カイが俺と番になる決心がついたらはずして」  そう言って、新居に移り住んだ最初の晩にムカイから贈られた。  防護首輪は、番のいないΩのために開発されたもので、首に噛みつくのを防ぐため、これをはめているかぎり番にはなれない  ムカイは、溢れんばかりの愛情で俺を包む。  ムカイと一緒に暮らしはじめてから数え切れない回数、発情期を迎えた。  発情期の間は、体が熱くなり、αの精が欲しくて欲しくて、発狂しそうになる。  ムカイも、Ωのフェロモンに呼応してヒートに陥る。  このまま、ムカイの隣で一生を終えても不満はない。  ムカイの愛情に応えたいと思う。  そう思うのに、どうしても首輪を外す決心はつけられずにいた。  そんなある日、ムカイが大事な書類を忘れていった。  ムカイは、すでにいくつか会社を任されている。電話で確かめる。 「ムカイ、書類を忘れているよ? 持っていこうか?」 『ありがとう! 悪いけど頼めるかな? 直接、社長室に来て。一緒にお昼を食べよう』  社長室には先客がいた。  邪魔をしないように、隣室で待機をしようと踵を返したときだった。  聞き覚えのある声に、体が固まる。 「俺は必ず、カイを連れ戻す」 「そんなことはさせない。俺とカイは運命の番だ。お前とは違う。βとΩの男同士なんて、子孫を残すことが出来ない不毛な関係だ。意味がない」 「意味はある。俺は、カイを愛している。カイといるだけで、強くなれるし力が湧いてくる」  ムカイの息をのむ気配が伝わる。 「さっき、首相に立候補してきた。必ず、当選してみせる。そして、この世界を変える。Ωの意思を無視する番探索プログラムなんてぶっ潰す。βもΩも同じ人間だってαの奴らにわからせてやる。誰でも強く望めば、世界を変えることが出来る」  扉の向こうには、会いたくて仕方がなかった愛おしい人の姿があった。  そうだった。  キヨは、いつだって素晴らしい決断と実行力で俺のことを守ってくれる。  きっと、キヨならできる。  この世界を変えることが出来る。  俺は、キヨの胸に飛び込むと、背中をギュッと抱きしめた。  懐かしいキヨの匂いに、涙が止まらない。  その肩の向こうに、キヨの隣で幸せそうに笑っている自分が見える。  いや、違う。  Ωやβ、αなんて性種に関係なく、全ての人が心の底から笑い合っている、  そんな素晴らしい未来がはっきりと見えた。

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