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Blast 前編③

それからというもの、俺は冒険者をまだ続けている。ギルドに籍があれば他の冒険者の情報を得ることができるからだ。一仕事終えた後は、この『苔庭のイタチ亭』に寄ることにしている。 ここは冒険者やギルドの人間が多く集まり、さりげない会話の中でもモンスターや他の冒険者の情報が飛び交っている。 ヴィーノが行ったダンジョンやそこまでのルートなんてとっくに調べた。難易度はそんなに高くなく、ヴィーノだったら1週間足らずで帰ってこられるはずだ。 「クソッ・・・・・」 ブラストを飲み干す。レモン水の氷が口の中に雪崩れ込むが、苛立ちも手伝って噛み砕く。 どこで何やってんだあの馬鹿。 あの馬鹿の顔を思い浮かべて最初に出てくるのは、最後に見た弱々しい表情だ。 それから、ヤンチャなガキみたいな笑顔。 アイツマジで貴族の坊ちゃんらしいな。ヤンチャがすぎて養子に出されたらしいけど。 ヴィーノの事を調べて分かった。 だけど、通りでキレイな剣捌きをするはずだ。 キレイすぎてすぐ読めちまうのが玉に瑕だったけどな。速さやフェイントでカバーしろって言ったけどちゃんと鍛えてんのかアイツ。 酒のことばっかり詳しくて煮炊きはからきしだったけど飯は食ってんのか。 ヴィーノが居なくなってから、アイツの事ばかり考えている。 本当に最悪だ。 多分、俺はヴィーノのことがーーー 突風が吹いた。 背中が冷たくなり、振り向くと入り口の扉が開いて、人影が浮かび上がる。 粉雪や北風と一緒にそいつが着ているローブが舞う。防寒具はそれだけのようで、下はまるで夏用の軽装備だ。 俺は脇目も振らず駆け寄った。 「ヴィーノ・・・ッ」 ローブのフードをめくる。ボサボサに伸びた金髪が広がって、掻き分けて顔を覗き込めば青い目が俺を映した。 ヴィーノだ。 「・・・アルゴ・・・」 声もやっぱりヴィーノのもので、柄にもなく目頭が熱くなっていく。 滲んでいくヴィーノの顔が引きつる。 「ーーー寄るな」 その言葉と共に、一閃。 殺気を感じバックステップしながら身体を右に捻ってかわす。 ヴィーノの腰に下げた剣が抜かれていた。 剣を構えたヴィーノの姿を一瞬捉えた後、キレを増した剣撃が俺に襲い掛かった。

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