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Blast 後日談② ※R18

店を出る頃、ヴィーノはすっかり酔っていた。 「・・・気持ち悪りぃ」 肩を貸してやったが足元がふらついていた。 大して飲んでいないが、まともに飲み食いしてなかったところに酒や食い物をガンガン入れたからな。 「だからほどほどにしておけと言ったんだ。 まだ本調子じゃねえんだよ」 「・・・バーカ、酒と肉以外の特効薬があるかよ・・・」 そう言いつつ口を押さえてえづいていた。 「まだ吐くなよ。ったく、早速足引っ張ってんじゃねえよ」 俺が部屋を借りている宿にヴィーノを連れて行った。共同の便所が水洗で助かった。 しばらく篭っていたが、俺の部屋に来た時には少しばかりさっぱりした顔つきになっていた。 「アルゴ、水あるか」 「ほらよ」 瓶詰めのレモン水を喉を上下させて飲み干す。 悪りぃな、と瓶を返してくる。 「個室なんて豪勢じゃねえか」 ヴィーノは部屋の中を見渡す。ベッドとハンガースタンドがあるだけの殺風景な部屋だ。家具は盗難防止の為、床に固定してある。 大抵寝るためだけに借りているようなものなので、ほとんどの連中は安い大部屋で雑魚寝したり相部屋を取ったりする。 「幸い仕事を取れているし、今報酬は俺の総取りだからな」 「うわっずりぃ」 「だいたいお前がなあ」 「あーわかってるって。 ・・・悪かったよ」 「その格好で言うセリフじゃねえな」 ヴィーノは一つしかないベッドで大の字になってやがる。 「眠ぃ。・・・オレ何か言おうとしたんだけど、なんだっけな」 肘を折って腕で顔を覆いながらぼやく。 「知るか。ほらもっと詰めろ」 「・・・・・・またキスしたら思い出すかも」 ヴィーノを押し除ける手が止まった。腕の下から青色がちらりとこちらを伺ったが、 「・・・なんでもねえよ」 とすぐに寝返りを打ってしまった。 ヴィーノの肩を掴むと、仰向けの態勢にした。両手首をベッドに縫い付け口付けを落とす。しばらく唇を重ね合わせたまま時間が流れる。 顔を離すと、ヴィーノはポカンとしていた。 「思い出したか?」 そう聞けば、青い目が瞬いた。やがてヤツの唇も動く。 「ーーー好きだ」と。 もう一度キスをした。先程よりも深く。 舌を絡め合い、互いの口内を行き来する。 「手ェ痛い。離せ」 手首を解放すると、腕は俺の背中に回された。 ピタリと胴体が合わさり、ヴィーノの心臓の鼓動が感じられた。早鐘のようだ。 首を伸ばし、耳や米神や首筋にもキスを落とした。見えている部分だけでは飽き足らず、服を脱がせて細身ながらもしっかりと筋肉がついた身体に赤い痕を残していく。 古傷や最近癒えたばかりのような傷跡だらけだ。 労わるように舌でなぞればヴィーノの身体は微かに戦慄いた。 女との行為とは違って静かなものだった。 静まり返った部屋にシーツが擦れる音や互いの息遣いや湿った唇が皮膚から離れる音だけが響く。 とっくに裸になっているのに身体が熱い。濃密で淫靡な空気が重たくて息が乱れた。 反り勃った怒張が擦れ合う度頭の中で何かが白く弾ける。もっと強い刺激を求めてヴィーノの脚を持ち上げ、そこを擦り合わせながら本能の赴くまま腰を打ち付けた。 「・・・ッ・・・」 ヴィーノから初めて声が上がった。シーツを握りしめ、悩ましげに眉を寄せて快楽に耐える様に欲望が煽られる。ますます激しく腰を動かした。 「あっ・・・バカ、もう出・・・っ・・・!」 ヴィーノの背中は反り返り、痙攣しながら精を吐き出した。 奔放に乱した金髪と熱の篭った青い目が扇情的で、また絶頂も近く律動をやめることができなかった。持ち上げた脚で自分のものをきつく挟み込み、大きく腰を叩きつける。 腰骨から旋毛まで電流が駆け抜け、ヴィーノの腹の上を白く汚した。 ヴィーノの脚を下ろし、隣で横になる。 余韻に浸りながら息を整えていると、ヴィーノが腕を叩いた。 「オイ、なんか拭くものくれ。動けねえんだよ」 起き上がり、布切れを荷物から引っ張り出して投げてやる。 「ったく思いっきりぶち撒けやがって」 「それはお前もだろ」 文句を垂れ流しながら腹を拭くヴィーノに言い返してやったら黙り込んだ。 「・・・あのさ、なんつうか、無かったことにしてもいいんだぜ」 ヴィーノは頭を掻く。 「オレ、酔ってたし。つい最近までおかしかったし」 「・・・お前何言ってんだ?」 「・・・まだ返事を聞いてない」 顔を逸らしつつも、こちらに目線を送っていた。 俺は呆れた。またヴィーノを押し倒す。 「あのなあ、ここまでしておいてお前の事なんとも思ってないわけねえだろ」 「・・・それじゃ」 「好きだ、ヴィーノ」 ヴィーノは俺を強く抱きしめた。俺も抱きしめ返す。数え切れない程お互いの唇や身体にキスを施し抱擁を交わした。 幾度も絶頂を迎え、精根尽き果てて眠ったのは空が白み始める頃だった。

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