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第3話

 *****  アサドというのは、ちいさな村で羊飼いをしている赤髪の好青年だ。  やんちゃそうな外見だが笑えば八重歯が愛らしく、親しくなればなるほどに底抜けの優しさを見せる。長身で立派な体躯を持ちながら、時折驚くほどあどけなく、またひとたび夜をともにすれば情熱的。  それがアサドの魅力といえよう。  そんなアサドが暮らす村に、あるとき近くの街の地主の息子がやってくる。  名前はヤン。  お坊ちゃまのヤンは我儘気まま、地元の街ではやりたい放題。  見かねた父親が社会勉強と称し田舎の村へと追いやった……という「設定」だ。  厄介払いされた自覚のあるヤンは、ことあるごとに村を腐し、頑なに村人と馴染もうとしない……そんな我儘お坊ちゃまが、けれどもそこで「真実の愛」を見つけ出し、心身ともに成長し街へ帰還する。  これがメインストーリー。  ヤン坊ちゃまを取り巻くのは、銀縁眼鏡をくいくいやる系の世話係。  滞在中寝泊まりする村長さんのお宅のツンデレ息子。  一体どうやって生計を立てているのか謎な吟遊詩人のおねえ。  筋骨隆々、包容力抜群の鍛冶屋。  童顔がコンプレックスのショタ系教師。  ヤンに一目惚れしぐいぐい迫ってくる狩人。  それから、羊飼いのアサド。  ちいさな村にしてはまあまあバラエティに富んだ面々。ちなみに皆男。  この男たちと、我儘坊ちゃまヤンは「真実の愛」を見つけていくのである。  一体なんの話をしているのかわからない方も多かろう……これはすべて、ゲームの話だ。いわゆるボーイズラブゲーム。ちなみに十八禁。  タイトルは「ヴィラージュ」。村。そのまんま。  アサドがやけに二次元に見えたのは、あれだ。ゲームの中の登場人物だからだ。ゲームが二次元なんだから、二次元ぽく見えて当たり前だったんだろう。  主人公のヤンは、相手や回収したフラグ次第で「受」にでも「攻」にでもなる。  基本は「受」だが、厳選したフラグだけを回収していけば鍛冶屋相手でも雄へと変貌するのだ……が、実際のところヤンがたどり着くエロスまではまあまあ道程が遠い。  作品テーマが「真実の愛」なので、ラッキーすけべはあるが道中エロスは存在しない。  最後に一発掘るか掘られるか……それがヤンの最大の見せ場なのだ。  だがこのゲームは十八禁。濡れ場も売りのエロゲ。  最後に一発どでかいのをかますとはいえ、途中途中でそれなりのサービスシーンがなければプレイヤーは納得しない。  そんなプレイヤーのガス抜きに用意されたのが「シア」だ。  シアは村の片隅に建つ教会の神父で、このゲームにおけるアダルト部門総請負人。  聖職者にして村人たちの慰み者。来る者拒まずといったキャラではないにもかかわらず、なぜかいつも誰かに犯されている。  開発されつくした身体は快楽に弱く、いけませんと繰り返しながらも犯され勃起し射精する。  主人公ヤンにとっての攻略対象、村の住人たちも軒並みこのシアとの絡みスチルが存在する。  プレイヤーを飽きさせないようにするためとはいえ、とにかく誰にでも犯される。成人男子だというのにまったく抵抗できない非力。日々神を讃えながら肉欲に溺れる聖職者。  ときに野外で、ときに聖堂で、ときには聖像にすがりつきながら数々の男に犯される……背徳的にして罪深い、聖職者の風上にもおけない「ヴィラージュ」の穴担当、それが「シア」だ。  さきほどアサドは「シア」に向かって身体が弱いからすぐに寝込むと、そういった。確かに「シア」はよく寝込む。ただ、その理由は身体が弱いからではない。しこたま犯され足腰立たなくなっているだけのことだ。  そんな「シア」が、オレ……?

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