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第26話
「ん……ッ?」
ぴったり重なった唇、歯列をこじ開けてくる舌先から甘ったるい液体が流れ込んでくる。
飲み込んだらまずい。そう思った瞬間、シャオメイとヤンのエロスチルを思い出した。
シャオメイルートのヤンとの初夜。
シャオメイはヤンに苦痛を与えまいと媚薬を飲ませる。
お陰でヤンは快楽に溺れながら処女喪失するわけだが……その内容がひどかった。処女にして娼夫。自ら尻を割り開き、挿れてくれと泣きながらねだる。
シャオメイは綺麗なおねえさんから綺麗だけどちんこ生えてるお兄さんに変貌し、請われるままにヤンを抱く。
快楽まみれのハッピーエンド……残念ながらオレには快楽堕ちのバッドエンドにしか見えなかった。
そう。シャオメイはセックスに薬を使う。
ヴィラージュにおける色物担当だ。
「あ、ん……ぅ、く……」
飲み込まなくても喉に流れ込んでくる。流れた側から舌が、喉が、もう熱い。なんというミラクル媚薬。こんなのひどい。
勝手に喉が動き液体を飲み下すと、シャオメイはやっと唇を離した。
「ついでにこっちも、残ったの塗っちゃおうね」
「ひゃッ」
ずぼっとズボンに手を突っ込まれたかと思うと、穴にひと塗り。まずい。
危機感プラス液体の冷たさに飛び上がった身体を、ガイルが押さえ込んでくる。いや、多分当人にそんな気はない。
ガイルの手は、ただ「シア」の上着の前をくつろげようとしていただけだ。が、それくらいの力にすらシアは敵わない。
ぷちんぷちん釦を外すとシアの貧弱な胸板が外気に晒される。
部屋が暑いので、まったく寒さは感じない。
「はい、じゃあここも。おまけ」
「ひぇ……ッ」
にゅるん、と両乳首にも塗られた。やばい。もう熱い。
シアに飲ませるために口に含んだシャオメイも、多分同じ熱を味わっている。
その証拠に、酒に酔っ払ったみたいに目つきがとろんとしていた。
「シアぁ……いっぱい遊ぼうね。今日は帰りませんって、おうちに連絡しといてあげるね」
「や、やだ……ッ、あッ、ん……ッ」
ふわふわ蕩けた微笑のシャオメイが、ゆるりと乳首を捏ねてきた。と同時に、腹を伝ってズボンの中に入ってきたガイルの手がまだおとなしい股間に触れた。
どちらの刺激で身体が跳ねたのかはわからない。多分、どっちもだ。
ガイルの手が股間を弄りながら、ズボンを脱がしにかかってくる。液体をひと塗りされた「穴」が疼く。
なにより、直接液体を摂取した口の中がひどかった。自分の舌が上顎に触っただけでぞくぞくする。
崩折れそうになる身体をガイルの腕に爪を立て支えるも、うまくいかない。
助けを求めて上を向くと、そこにガイルの顔が覆いかぶさってきた。
唇と唇が触れる。開いた口の中にガイルの舌が入り込んでくる。
どこを舐めても電流が走る口内で、ガイルはただただ舌を吸ってきた。
あふれた唾液が口の端からこぼれる。膝が笑っている。ずるずるとガイルの胸からずり落ちたかと思うと、気づけば尻が床についていた。
舌を絡ませながら追ってきたので、ガイルも床に座っていた。
シャオメイは……座るどころか、這っている。
蛇のように這い、やんわり勃ち上がりかけた股間を前に舌なめずりしている。
「シャオメイッ、やめ……ッ、あッ、くぅ……」
思わずガイルから口を離して訴えたが、もちろん聞いてはもらえなかった。ぱっくり食いつかれて背中が弓なりに反った。
そこにガイルの手が伸びてくる。落ちていた顎をすくい上げ、再び唇を寄せてくる。
床に座り込んで身体を支える必要がなくなったからか、空いた片手は乳首へと伸びてきた。
「んッ、んぅ……ッ」
口の中が敏感になっている。乳首も。股間も。
そのすべてを刺激され、脳味噌が混乱している。どれに意識を集中したらいいのかがわからない。
股間をしゃぶるシャオメイに気がいくと、それを咎めるように乳首が抓られる。
ガイルの舌に朦朧とすると、シャオメイがきつく扱き上げてくる。
その間もずっと「穴」が疼いていた。
シャオメイが吸い付いてくるのに合わせて、ガイルが舌を絡ませてくるのに合わせて、勝手にひくひく動いているのがわかる。
いっそもう、触って欲しい。
触って、ほぐして、拡げて、埋めて欲しい。けど、触ってと口にしてしまったら終わりだ。
そんな気がした。
腰の裏側で、ガイルのガイルもかたくなっているのがわかる。身体を揺すって……背中を使われているのがわかる。
シャオメイも「シア」に愛撫を施しながら自分で自分を慰めている。
「あッ、あ……ぅ」
ガイルの腕が腰に回ってきたかと思うと、わずかに身体が浮いた。
後ろから擦りつけてくる感触が、背中から尾てい骨に移った。
あとすこし……あとすこしずれたら……朦朧とした頭でそんなことを考え、我に返る。だめだ。ねだったらいけない。
何かはわからないが何かが終わる。確実に。
けど「穴」が疼く。
熱心に吸われている股間も熱い。
穴がだめならせめて出したい。体内をめぐる熱で内蔵が溶けそうだった。
もう出したい。これ以上我慢したくない。快楽に身を委ね、楽になりたい。
せっかく相手がふたりもいるのに……
「や、やだぁ……ッ」
それでも口をついて出るのは拒否の声で、それが自分でも不思議だった。
シアの「設定」だろうか。
とはいえ、設定だろうがなんだろうが刺激され続ければいずれ限界がくる。現に、もうすぐそこに迫っている。もう。
「あ、も……ッ、だ」
だめだ。
ふ、と意識が遠のきそうになったとき、突然扉が開いた。
冷たい風が吹き込んできて、暑い部屋の温度が一気に下る。
最後の瞬間に不意を突かれ、出すのも忘れてそちらを見る。ガイルも、床に這いつくばっていたシャオメイも、扉の方へと目を向けた。
そこに立っていたのは……アルディだ。
「よう、おふたりさん。悪いけどその子、離してやってくんない?」
終わった……主要キャラが三人に増えた。もうアサドの家には帰れない……
そう絶望した矢先、アルディがいった。
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