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第35話
一度出しただけで腰を抜かすと、身体は二階に移動した。したというかさせられた。
狭い階段にもかかわらずアサドは器用に「シア」を抱き、ベッドにそっとその身を置いた。
着ているものをすべて剥ぎ、裸の「シア」を見下ろしながら自らもシャツを脱ぎ捨てた。厚い胸板。引き締まった腰。
欲情を雄弁に語る象徴。
見下ろす瞳が熱に潤んでいる。シア、と何度も名前を呼んでくる。
素肌に素肌を擦り寄せて、その感触や温度に酔う。
何度もシアと呼んでくるから、こちらもアサドと呼び返す。
すると、どこを舐めていてもすぐに顔をあげ、伸び上がって唇に触れてきた。何度でも。
頬を撫でられただけで背筋が震えた。おおきな掌がシアの薄い胸板を撫で、乳首を弄び、臍を抉って股間を扱く。
一度出したくらいでは萎えない淫乱神父の身体は、与えられる愛撫にまんまと歓んだ。
ベッドの上で再度いかされ、息も絶え絶え痙攣する。
その間も、アサドのアサドは手つかずのまま。
これでもかと自己主張しているのに当のアサドは見向きもしない。
流石にそれでは可哀想かと手を伸ばそうとしたら、しなくていいと押し返された。初めては中で迎えたいのだ、と。
謙遜したのかと思いきやめちゃくちゃスケベな野望を語られ、素直にドン引きしていいのかちょっとぶりっこして恥じ入ったほうがいいのか迷った。
結局ドン引きする方を選んだら、アサドの方が照れていた。イミフ。
潤滑油を纏ったアサドの指が「中」に入ってきたときは、衝撃だった。
ちゃんと潤滑油を使ってもらったのは初めてだったことに、今更ながらに気がついた。
シャオメイにおかしな液体を塗られたときは、そっちに気がいってしまっていたので比べる対象にはならないが、ライアに指を突っ込まれたときとは圧倒的に感触が違っていた。
抵抗しても入ってくる。奥まで無遠慮に。けれども痛みは感じない。
滑る内部を差し込んだ指は気ままに探り、いい場所を何度も何度も押し潰されてまた果てた。
最初アサドは、前から中に入ってきた。
恥ずかしいから顔を見ながらするのは嫌だといったが、アサドがどうしてもと甘えてきたので結局負けた。
アサドのアサドは太くてかたい。それが中に入ってくる感触は如何ともし難いものだったが……すべておさまりしばらく経つと、ぴったり吸い付くみたいにそこに馴染んでいた。淫乱神父の身体すごい。
全方位をごりごり削られ「シア」はまたひとりで先に限界を迎えたが、アサドは何度も苦悶の表情を浮かべながらも耐え、ゆるゆるゆるゆる、ずっと中にいた。
もう出たくないと囁かれたので、蹴っ飛ばして追い出した。
「あッ、んッ、んぅ……ッ」
身体を繋ぎはじめてから、どのくらい経っただろう。
這いつくばったその後ろ、アサドは未だ中にいる。
自分の出したものでシーツはもうべしゃべしゃだし、すっかり腰が抜け膝で身体を支えているのもつらい。出しすぎて股間も痛い。
「アサド、も……」
「もうちょっとだけ……あとちょっと。おねがい」
「んぅ……」
半べそでリタイアを申し出るも、可愛くおねだりアンド甘えんぼキッスで口封じされると抵抗できない。
懸命に振り向いた肩越し、触れた唇のやわらかさあたたかさに思考が蕩けた。
多分「シア」はアサドが好きだ。
オレじゃない。
シアの話だ。
アサドが求めてくる限り、抱かれていたいと「シア」も考えている。
自分の身体で「恋人」がうっとりしている姿を見るのを幸福だと感じている。ずっとこのままでいたいとも。だから逆らえない。
シアが泣き言をもらしたからか、アサドの動きが大きくなった。
望み通り終わらせようとしてくれているのかもしれない。
が、アサドが終わらせようと頑張り始めたということは、よれよれのシアの身体がまた揺さぶられるということだ。
やっとおとなしくなりかけていた快楽の種が、腹の底で突然芽吹く。衝撃に目眩がした。
「あッ、ちょ……、ふかッ、お、おく、奥……ッ」
ぐっと深い場所で強く揺さぶられると、油断していた内側が快楽に飛び上がる。
シアの身体でアサドが自分の快楽を追っている。
中で果てるためにだけにひたすら最奥を目指し、本能だけで腰を擦り付けてくる。たまらなかった。
「もうちょっとだけ我慢して、もうちょっとだけだから……ッ、ごめん」
「あッ、や、やだ……ッ、やだやだ……あ、んッ、んんぅ……ッ」
一度ずるりと退いていった。と同時にひときわ強く打ち付けられた瞬間、中で弾けたのがわかった。
アサドがいった。この身体で。それに脳が、五感のすべてが歓んでいる。
嬉しくて、それで、歓びだけで「シア」もいった。
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