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第10話 彪

  芹人との行為の無い夜は随分と久し振りに感じて、それでいて誰も居ない俺の部屋は……やけに広くて、それに寂しく見えた。 自分の匂いが染み着いていて、何時もだったら安心できるのに。……声が無いだけで、姿が無いだけで、温度が、気配が無いだけでこんなにも虚しく感じるものだったのだろうか? 「あい、たい」 ……待て、俺は今何と言った? 「あいた、い……?」 会いたい? 誰に会いたいんだ? 「あいたい……あいたい」 口から俺の意思とは関係無しに会いたいなんていう、ふざけた言葉が零れ落ちていく。 きりきりと締め付けられるような感覚に捕らわれて、俺は拳を握った。ぐ、と唇を噛んでみる。こんなの有り得ない。可笑しい。何かの間違いだ。 「会いたい、なんて……会いたいなんて、可笑しいだろ、違う、芹人は俺のことなんか……っ」 生暖かい雫が零れ落ちた。 頬を伝って、床に染みを作る。……信じられなかったし、信じたくも無かった。 恋しいんだ、芹人の声と温度が。あんなことを俺にしたとしても……芹人は芹人で、俺は俺で。 縮まるわけもない距離は互いに引き離し合って訳で、もうどうしようも無いよ、なあ!  

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