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終幕 第11話 芹人※
彪に背後から近付いて、何も言わずに路地に引き摺り込んだ。どうしても会社に行って欲しくなかった。脅して、口止めは出来たけど……あいつに彪を見せるのが本当に嫌だった。
……彪は驚いたように声を上げようとしたけど、俺はその時には既に唇を塞いでいた。
「ぁっ、せ、りと……?!」
「黙れ」
艶やかしい彪のその声を本当に、本当に聞くのが辛くて、俺は思わずそう唸った。……自業自得なのに、胸が痛む。
怯えて固まったのを無視して、俺は誰も来ないような路地の奥まで彪を引っ張り込んだ。
「ま、ここっ、そと……っ」
「ああ……見付からなきゃ良いな」
荷物をそこら辺に投げ棄てて、彪の唇を強引に奪う。序でにシャツのボタンを外して目を細めた。
どうしようもなく、どうしようもなく苛つく。彪の獣としての姿を俺以外に見られたのが、どうしようもない程に俺を苛つかせる。一部だとしても? そんなのは関係ないんだ。
無理だ、このままだともう収まらない。と言うよりももう収まってない。
腹が立つ、腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ!
「や、め……っ」
「口答えする暇あんなら精々啼いてろ」
苛つきを抑えようとしても、俺の口から溢れてくるのは暴言ばかり。解ってる、こんなのは俺の本心じゃ無い。……でも、抑えきれないんだよ。
扇情的な彪の潤んだ目も、耳に付くような艶やかな甘い声も、そして俺の腹の中に巣くってる黒い感情も。……激しい衝動の元になって、俺の手と口とを通じて彪の体を弄んでしまう。
ああ、見付かったら社会的に死ぬのは俺も同じなのに……何なんだろう、この自棄になるような苦しい感情は?
「お前は俺に啼かされてれば良いんだよ。さっさと啼け」
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