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第12話 彪※
ただ、哀しかった。
自分の感情を理解してしまった後なのに、なのにこんな風に扱われることが。
芹人のことが好きなのに。
芹人との時間を嫌いに為れないのに。
芹人が俺に囁く言葉が、どうしようもなく俺を縛るのに……。
「ぃ、あぅ……っ! ひァ……ぁ、あああっ!」
「おい、未だへばるんじゃねーよ」
冷たい声と、酷い言葉。
何時もとは違う、貪るような激しい行為に俺の意識は完全に飛んでしまいそうだった。
なのに、一向に芹人はそれを止める気配は無い。愛撫も乱雑で、寧ろ俺より芹人自身の快楽のためだけにやられている感覚だった。
ああ……俺の体を弄っているのは、ただ反応のためだけなのか? 俺は、芹人にとっては単なる性欲処理の道具なのか? 嫌だよ、なあ嫌だよ……やっと受け入れることが出来たんだ、伝えさせてくれよ、芹人も受け入れてくれよ……。
「……だ」
唸るような小さな声が聞こえて、聞き返す前に俺は奥の奥まで芹人に穿たれた。
叫ぶことすらも出来ず、俺は意識を半分飛ばす。
「……ごめん」
小さな小さな声が、僅かに残っていた意識に響いた。
その声は酷く哀しげで、苦しげで……何故そんな声で俺に謝るのだろう、なんて考えてしまう。……嬉しいには、変わりないはずなのだけれど。
ずるりと俺の中から芹人の体温が無くなって、でも反応することも無理だから支えられるに任した。……瞼が開かない上に、指一本すら動かせない。
「ごめん、彪ごめん……好きだ、好きだよ……! ごめん、こんなの間違ってる。解ってる。解ってるんだけど……お前を離したく、無いんだ……」
耳元に囁かれた芹人の言葉は……虚ろな残響だけを残し、俺の落ちる意識と共に消えていってしまった。
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