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第15話 芹人
好きだと、聞こえた。
受け入れて欲しいと、そう……聞こえた。
どうすればいいのか解らなくて、俺は部屋の前でただ息を吞むしか出来なくなる。
彪の、これは彪の本心?
寝言じゃ無いのか? 間違いじゃ無いのか? 彪、彪彪あきらあきら……?
「っ……」
思わず扉に背を向けた。
早足で玄関まで向かって、そのまま何も言わずに外に出る。靴を引っ掛けて、鍵も閉めてない。……でも良いんだ。今は……彪に合わせる顔が無いから。
周りの音は聞こえてない。
風だけが俺の耳元を通り過ぎていた。
……目に留まる、非常階段に足を踏み入れた。目指すのは……何処だろう。
取り敢えずは、屋上へ。
「こんなに……このマンション、高かったっけ」
嫌に風が強い。
気付けば俺は街を足元に見ていた。……この屋上にはフェンスが無くて、何時の間にやら俺は屋上の縁に腰掛けている。
ああ……このまま、身を投げてしまおうかな。彪に合わせる顔なんて、今更無いし。
どうせだ、なんて思ってしまう。
「……もう良いや。ごめん、彪、ごめんな。許さなくて良いから。……ごめん」
目を閉じて、重心を前に傾けた。
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