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4月...1

春爛漫に桜が吹きすさび、花粉が蔓延する季節 新入生達が続々と入ってくる中 俺は、とんでもない場面に直面していた。 遡ること数分前、トイレで散々自己否定したあと、教室に戻ろうとトイレを出たら走って来た女子生徒とぶつかってしまった この人確か... 「えと...南条さんだよね?同じクラスの...!?」 この子泣いてる!?何故!? もしやさっきぶつかった時に、どこかぶつけてしまったのか...!? ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙女性に怪我をさせてしまうなんて、俺はなんてことをしてしまったんだ ただでさえ陰キャでクラスから遠巻きにされてるのに、女性に怪我させてしまったとなればさらに遠巻きにされて、更には机まで隠され...そして高校最後の1年はいじめられて終わるんだ... 「...あの...」 「...俺なんかが生きててごめんなさい」 「何故!?...あなた、同じクラスの仲田君よね?」 「...はい...すみません...」 「なんで謝るのよ、廊下を走ってたせいでぶつかった私が悪いんだから、あなたは何も謝ることないのよ?」 「だって...あなた泣いてるから...すみません...俺が至らなすぎるからあなたに怪我を...」 「え?...あぁ違う違うこれはいいのよ、あなたのせいじゃないもの」 俺のせいじゃない...? 「あの...とりあえずハンカチどうぞ「陽から離れろ!!」...うぐぁっ」 あれ...何だろう目の前がクラクラす...る 「うっ...」 「ちょっと大毅!!!!何やってんのよ馬鹿!」 「だってこの男、陽に触ろうとした」 「はぁ?違うわよこれは....ちょっとりあえず保健室!大毅この人持ち上げて!保健室運ぶわよ!」 うっ...頭が... 「ここは...」 保健室?なんで? あっそうだ...彼女...南条さんと話してたら急に膝蹴りが飛んできて...そのあともどうしたんだっけ?そもそもなんで俺トイレにいたんだっけ...? なんか周りに誰もいないし...今何時だ? 「...16時か...!?16時!?夕方!?...っう...」 おでこが今までにないくらい痛い...腫れてる? うわ...たんこぶって初めて出来た... ガラガラ 「あっよかった起きてる、これ君のカバンだよね?持ってきちゃった」 「あっありがとうございます...」 高校三年生初日から授業をサボって1日保健室で爆睡って...何やってんの本当俺... 「いいのよ」 「あの...なんで泣いてたのか聞いてもいいですか?」 「え?...あぁ...私ね、恋人と別れたのちょっと強引だったけどね」 「そうなんですか...」 ...この人本当は別れたくなかったんじゃないのかな...俺は恋愛なんてしたことないからわかんないけど... 「あの...」 「うん?」 「よかったら、カラオケ行きませんか?」 「...なんで?」 だよね!そう言うよね普通! だけど母さんが... 『いーい?絢斗泣いてる女の子を放っておくような男になっちゃダメよ?そーいう最低な男はドラマの中だけでいいの』 『わかったよかあさん』 「しっ失恋の痛みは歌って忘れるのが1番だって、うちの母がよく言ってて」 「お母さん?」 「はいっうちの母さんは世界一なんです!」 よく恋愛ドラマの撮影が終わると、失恋したからカラオケ行くわよ!って無理やり連れ出される 別に相手役の人を本気で好きになる訳じゃなくて ドラマ撮り終えると同時に相手への気持ちがなくなるから、それを母さんが失恋と言ってるだけなんだけど 「お母さんが大好きなのね...」 はぁっ!しまった...これやると必ず引かれるからしないようにって高校入学する前に誓ったのに...三年生になって崩れるとか... 「すみません...」 「どうして?いい事じゃない、私もお母さん大好きよ?....よしっ分かったわ!行きましょう?カラオケ!」 「へっ?」 「なによ、あなたが言ったんでしょ?失恋の痛みは歌って忘れるのが1番だって」 この人...少し母さんに似てるな 強かで、すぐに前を向ける コンコン 「それ、僕も行っていいかな」 珍しい...紗夜が学校で話しかけてくるなんて 「...えっ嘘王子様?」 「紗夜...いいの?」 ...あれ?何だろう 俺...何か忘れてる気がする 「痛っ...」 たんこぶ触っちゃった

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