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5月1─1

5月 ゴールデンウィークも過ぎた頃。 小中学生にとっては運動会の季節 俺と、俺の幼なじみである紗夜の母校に通う小学生の子が今朝同じマンションから体操服入れを背負って、肩から水筒を提げて登校して行った。 そうか...今日は運動会なんだ 道理で日差しが強いはずだよ 中学生の頃、まだコンタクトしてなくてずっとメガネだったから、メガネ痕の日焼けつくのが嫌で顔に日焼け止め塗りたくってたな... 紗夜に至っては完全防備だったし 「仲田くん!おはよう」 「南條さん、おはようございます」 あれから滞りなく大毅君と復縁した南條さんは、どことなく毎日楽しそうだ 「チッ...陽の事いやらしい目で見やがって」 「見てないよ!?」 大毅君もあれから少しづつ俺とも喋るようになってきて、何故か一緒にお昼を食べるようになってしまった 「...今日はあいつ居ないんだな」 「あいつって紗夜?紗夜は今日はお休みだよ都内の方でね母親の付き添い」 「あぁ...そう言えば王子のお母さんアルバム出したんですってね今日はその披露会で演奏するんだっけ?」 「うん...アルバムの中に二重奏がいくつかあってそれに紗夜が関わってるからって紗夜も一応プロのバイオリニストだからね、お仕事の時は学校来なくていい代わりに、テストでいい成績残してくださいねって学校で言われてるみたい」 「王子いつも学年10位圏内だもんね...やっぱ才能ある人は苦労の度合いが違うのね」 「ケッいけすかねぇ」 でも本当に凄いよな紗夜...毎日勉強しながらバイオリンのお稽古もして 「やっぱ卒業後は海外なのかなぁ」 「そりゃあんだけなんでも出来たら日本にいるのは勿体ないわな...気に入らないけど」 「でも認めてるんでしょ?」 「...うっせ」 ...そっか卒業...そうだよねいつまでも一緒に入れるわけじゃない、卒業したら今みたいにはいかないんだ 「仲田くんは?大学行くの?」 「うん...特にやりたいことも無いしうちの近くの大学かなぁ」 「それってさC大学?」 「そうだね俺の学力的にもうちからの距離的にもちょうどいいし」 「ほんと!?私もそこ行こうと思ってるんだ!よかったぁ私だけじゃなくて」 「何!?お前まさかまた俺から陽を取ろうと思ってるわけじゃないよな!?」 「だからそんな気ないってば!」 またってなんだよ...今まで1度もないわ 「待ってください!!!!」 「えっ何?誰かこっち走ってきてない?」 そう言われて振り返ったと同時に、誰かにぶつかって尻もちをついた 「痛っ...」 「あっ...ごめんなさい...」 「止まって!!話を聞いて!!!!」 「っ!あっあのこれ!返さなくていいので!!!!!!」 「えっあっ!」 俺にぶつかった彼はハンカチと絆創膏を渡してそのまま慌てて逃げるように走っていった 「大丈夫かよどんくせぇな」 「あっごめん...ありがとう大毅君」 差し伸べられた手を掴んで、立ち上がるとハンカチから何かが落ちた なんだこれ...赤い糸が巻かれた空のシャーペンの芯入れ? とりあえず包んどこう 「なんだったのかしら今の子達」 「赤塚 春兎...確か同じクラスだった」 「赤塚...F?」 「は?」 そんなこんなで学校に着くと、校門前に人だかりができていた 「やっと捕まえた...!」 「離して!私っもう貴方とは居られない!!」 !?!?!? あれってさっきの2人だよね? なんかとてもイケナイ雰囲気を醸し出してるけど 「何故!...そんなに家が大事なのですか?」 「違っ...そうじゃないわただ...」 あっ...これってもしかして 「こんな校門の真ん中で何やってんだこいつら」 「シッ大毅黙ってて」 「俺は本気で貴女を愛してる!俺と一緒に逃げよう!あんな家なんか捨てて俺と一緒にこの世界の果てに」 「簡単に言わないで...っ!私はあなたと一緒には行けない...ごめんなさいっ」 凄い...本当に泣いてる...? その演技力に見とれていたら、追いかけてた方の男の子が不敵に笑みを浮かべて制服の懐からチラシを出して配り出した 「続きは今月末の演劇部の不定期演劇会で!観劇料として1人500円いただきます!」 「演劇部?」 「大毅はまだ入学したばかりだから知らないわよね、うちの演劇部。たまにああやって次やる劇の1部を披露してお客さん集めてるんだよ結構賞取ってるし、文化祭とかチケット取れないって人気なんだよ」 「へぇ...」 そんなことを話していたら、さっきぶつかってしまった人がこちらに駆け寄ってきた 「よければさっきぶつかってしまったお詫びに無料でチケット差し上げます、そちらのお2人も」 うわ...さっきは気がつかなかったけど、この人すっげぇ綺麗な顔...黒髪に翡翠の瞳...目鼻立ちもくっきり整ってるし、ハーフかな...なんか王子様みたい 「あの...」 思わず見とれちゃった 「あっごめんなさい」 「行くぞ春兎」 「うん、あっ九条君後で僕の所おいで、チケット渡してあげるから」 「あぁ?いらn「大毅、絶 対 貰ってきて」...はい」 「Bye」 残り香まで美しい... あっしまったハンカチ返しそびれた でもちょっと汚れちゃったし洗ってから返そう 赤い糸のシャー芯入れも、もしかしたら大事なものかもしれないし あんなに綺麗に包んであったんだから、きっとそうだよね

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