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5月3...1
やっぱ凄いなぁ
ヴィッグとか衣装とか、何も身につけてないのに
動きや話し方だけで、そこに女性がいると思わせる
春兎くんきっと才能がある。
母さんが見たら絶対スカウトしてる
後で言ってみよう
...にしても
縁って何があるかわからないよね本当に
たまたま春兎くんとぶつかって
差し出されたハンカチにたまたま春兎くんの大切なものがあって
たまたま俺が捨てなかったおかげで、こんな素敵な演技を独り占め出来てるんだから
相手役の子も凄く演技上手いし
ここの演劇部、確か中等部は母さんもOBなんだよね
入部オーディションがあって
審査に通った人だけが入部できる独特な部
だからこそ強く、本物に負けないほどの力を持っている
母さんが主演した舞台のDVD見せてもらったけど
本当に、中学校の演劇部って考えたらかなりレベルが高いものだったし
「春兎くんは、将来プロ入り?」
「うーん...どうですねあんま考えてないです」
「映画のエキストラとか舞台の客演とかオファーあるんじゃない?」
「いやぁないんですよねそれが」
絶対嘘だ、こんな才能のある子業界の人がほっとくわけない
「うちの部がそーいうの禁止なんですよ、無いわけじゃないと思いますよ」
突然間からひょこっと現れたのは相手役の子だった
「そうなんだ、君も負けず劣らず素敵だったよ」
「ありがとうございます先輩...でいいんすよね?」
「今年3年だよ」
まぁ俺影薄いもんな...紗夜が隣にいたら余計
「あっじゃあ先輩だ、ちなみにいつの間に春兎と仲良くなったんです?」
「....秘密」
多分...この子だよね
春兎くんの好きな子
他の子達より仲いい感じだったし
だったらきっと言わない方がいい
「えー気になるなぁ春兎ね結構人見知りなんですよ。どうやってたらしこんだんですか?」
「寛人!言い方!すみません先輩」
「いいよ、でもたらしこまれたのは俺の方かな」
「へ!?」
「あははっ」
母さん以外でここまで演技に引き込まれたの、始めてだし
もうすっかりファンになっちゃったな
「あっじゃあ俺ここで」
「あっ送ります!遅くまで居させてしまったし」
「いや!いいよいいよありがとう」
うちまで来てもし母さんと鉢合わせたりでもしたら大変だし
それになんか...寛人君だっけ...?の雰囲気もさっきからちょっと怖いというかなんというか
「絢斗」
「...?わっ紗夜さん!」
まずい...紗夜が俺の事絢斗って呼び捨ての時は、かなり怒っていらっしゃる時...今日ずっとほったらかしだったからな...○される...
「じゃあっ!」
「あっはい!また」
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