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6月...3

うちに帰ってテレビを付けると、ニュース番組はとある報道で持ち切りだった 都内某所に8月OPENのショッピングモール真ん中を吹き抜けにして水族館に へぇ...すごいなぁ 「あやちゃん、今日南さん泊まりなんだって」 「...なんで紗夜が知ってるの」 「メール?」 なんで母さん息子の俺じゃなくて紗夜に先にメール送ってんの 「はぁ...じゃあ夕飯出前でも「泊まって」ダメ紗夜明日華夜子さんとテレビでしょ?ちゃんと帰りなさい」 「...チッ」 「舌打ちしないの!」 ...最近、紗夜は事ある事に俺の家に泊まろうとして聞かない ただでさえ毎日一緒に帰って母さんが帰って来るまでいつも家にいるのに泊まりなんて...もう住んでるじゃん 心配してくれてるのは、わかるけど あれからずっと春兎君たちと話せてない... 自分で離れることを選んだんだからしょうがないけど 「水族館...そういや昔幼稚園の遠足で、行き先が水族館だって知った時あやちゃんガン泣きだったよね」 「えっ知らない何それ」 「水槽割れたらサメに食べられちゃうーってあやちゃんの不安が他の子達にも伝染してもうクラス中が阿鼻叫喚」 「うわ悲惨...」 「先生があれは何があっても絶対割れない魔法がかかってるから大丈夫よーってその場を落ち着かせたんだけど」 「あっ思い出した、その後紗夜が魔法なんてあるわけないじゃん、ただガラスを何枚も重ねて強化ガラスにしてあるだけだよって言ったんだ」 ※実際は、アクリルガラスって言うやつみたいですね そうだった、んで結局紗夜くんすごーいで終わったんだ 「ふふっ」 あの時の先生の苦笑い忘れられないな 「何笑ってんの」 「いや、先生可哀想だなって思ってさ」 「嘘を教える先生が悪い」 そういや、そのとき行った水族館も確か鳴海グループの建てた水族館だったな 本当、知らない間にお世話になってるんだな 次の日 教室がいつもよりざわついていて、何事かと耳を澄ますと なんでも南さんと鳴海さんの事が先生伝いに親御さんたちに伝わってしまい、南さんがあんた達のせいだと怒鳴り込んできて、騒ぎを聞きつけた先生方が落ち着かせる為に職員室に連れていった という事だった だから南條さんいないんだ、カバンはあるし休みじゃないって事は一緒に職員室行ったのかな 「やっぱ親の血なんだよな、南の父親酒癖悪くて暴力沙汰起こして警察に捕まったみたいだし」 「マジ?」 「マジマジ、うちの父親が見てたんだよ」 「鳴海の母親も、未婚らしいし」 「2人とも同じ家に住んでるらしいしな」 ...こういう噂は好きじゃないな かと言って俺が何か出来るわけでもなし... とりあえず南條さん迎えに行ってこよ えーっと確か職員室だよな 「別に、誰かにわかってもらいたい訳じゃないの...女が女に恋する事ってそんなにいけないこと...?」 この声...南さん? ここは保健室だ...まぁ職員室よりはいいよね 「誰にも迷惑かけてないじゃない...」 泣いてるのかな 心做しか声が震えてる気がする そうだよね...南さんも鳴海さんも何も悪いことなんてしてないよね 「そうね...でも、どうしても人間って自分と違うものを普通じゃないって決めつけちゃうのよ」 母さんが言ってたな 集団心理ほど、怖いものは無い って 「先生も、私は普通じゃないって思うの?」 「誰に恋をするかなんてその人の自由だもの、先生はあなたを否定したりなんてしないわ」 「ありがと先生」 コンコン 「失礼しまーす、南條さんいますか?」 「仲田くん...」 あらら...泣いてる さっきからずっと聞こえてた泣き声って南條さんのだったのか 「教室戻れそ?」 「...あんな教室居たくない」 「だよね、俺も逃げてきちゃった」 どうして人間って、いない人の悪口堂々と言えるんだろう...と言ってもまぁ俺もたまに悪口言っちゃったりするし人のこと言えないんだけどさ 「じゃあ2人とも一限終わるまでいなさいな、先生には話しておくから」 「ありがと、この美先生」 ...あれ?そういや 「南さん、今日鳴海さんは?」 「夢は今日は休み、今頃荷造りでもしてんじゃない?」 「荷造りって...」 「噂で聞いたかもしんないけど、私達一緒に暮らしてたんだよね、だから母さん達それが良くなかったんじゃないかって母さん達まで自分の娘を異端者扱いだよ...」 唯一子供の頼れる味方の親まで... 放課後、家に帰ると珍しく母が家にいたので事の顛末を全て母に話した。 「まぁっ何よそれ その子達は何も悪くないじゃない」 「うん...だけど昔の人は同性愛者は異質だって頑なに認めようとしないじゃない?いつだったかもワイドショーに出てる人がさ生産性の無い同性愛者は社会の異物だって」 まぁその人は非難の声が殺到して表舞台からは姿を消したけど、今もネット配信してるみたいな噂聞くんだよね 「それはその人達の考え、そんなこと言う人達の為に自分の将来を諦めちゃダメよ!そうだわ絢斗その人のとこに連れて行って!」 「はぁ!?何言ってんのダメだよ!」 俺が母さんの息子だって知ってるのは紗夜を除けば校長先生と担任だけ...いきなり今をときめく人気女優染谷ミナミがなんの関係もない俺を引連れてきたら混乱するに決まってる 「そうだよ南さん、プライベートで出歩くのは1人ならまだしもあやちゃんを連れてくのはダメ、あんまり2人似てないし恋人か?って週刊誌にすっぱ抜かれたらどうするの?」 紗夜...似てないって... 「さっちゃん...別に私は絢斗が息子だって知られても」 「ダメだ、お前絢斗産んだのいくつだと思ってんだよ」 「友樹さん」 「よォボウズ相変わらずもっさい前髪だな、金やるから切ってこいよ」 「やだよ、俺は好きでこれなんだから」 黒田友樹さん、母さんが妊娠した時にマスコミから隠してくれた、母さんの友達で母さんと同じ事務所の俳優さん兼母さんのマネージャーもしている 「友樹、なんでいるのよ」 「お前が着替えを取りに来たいって言ったから車だしてやったんじゃねぇか、なかなか戻ってこないから来てみれば...ほら現場戻んぞ」 「あーんせっかくの我が家なのにぃ絢斗!とりあえずその人のとこには絶対行くからね!」 そう言って母さんは、引きずられながら職場に戻って行った だから行かねぇってば 「ってか紗夜はなんで来たの?」 「今日母さん居ないんだよ、父さんもいないって言うし南さんもいないんでしょ?だから泊まろうと思って明日土曜日だし」 「紗夜最近そればっか...別に俺1人でも大丈夫だよ?」 「ダメ、僕がやなの」 「とりあえず今日は帰って、ね?」 紗夜...最近変なんだよな 今までずっと俺の事ほっといた癖に、急に一緒にいたがって いつから...そうだ3年に上がってからだよ あの日...大毅君に蹴り飛ばされた日朝からの記憶がないんだよね 何か大切な事を忘れてる気がするんだけど...

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