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6月...4

日曜日の朝 母に叩き起され南さんの家に強制連行された 「ちょっと母さん!俺ダメだって言ったよね!!」 「でもあなたが私に相談してきたって事は、私になにかして欲しかったって事よね?」 「いやただ俺は、自分の考えを整理したかっただけで...とにかくこれは当人同士の問題だから、部外者がそう簡単に口出していい話じゃないよ!」 ...なんて俺の声は母さんには届かず、母さんがインターホンを押そうとした瞬間 ガチャ... 「ちょっと...なんなの人の家の前で...ってあら?染谷さん?」 「あらぁここあなたの家だったの南さん」 こんな大きなお家なのに二人暮しなんだ...この人は南さんのお母さん...なのかな 「上がって、お茶でも出す....そちらは?」 「あぁいいのよ気にしないで」 「俺、娘さんの同級生で仲田 絢斗って言います。この人の付き添いなんですけど俺もお邪魔してもいいですか?南さんの作る建物が好きで、将来建築士志望なんです」 絶対母さんには余計な事させない 「えっえぇ...」 「ありがとうございますっ」 「あんた、俳優いけんじゃない?(ボソッ」 「やだよ...あっお邪魔します」 へぇ...すごい さすが建築家の家だな...家中に満遍なく光が届いてるって感じ 何だこの階段浮いてる?ように見えるんだ透明な柱がある なるほど、光の屈折で見えなくなってるんだ よく見ないとわからないようになってるなんて、すごい計算されてんだろうな 「あんまりまじまじと見られると恥ずかしいわね」 「これはあなたが?」 「えぇ、この家の設計は全て私が」 「へぇ凄いや」 「それで?染谷さんは何しに?CMについての事なら私より妹の方が」 「その妹さん、どこにいるの?」 なんか...変なスイッチ入ってないか?母さん 「...貴方何でここに」 「あっおはよう南さん...俺はあの人の付き添い」 南さん左頬が赤い 「話はそこの男の子から聞いてるわ、貴女自分の娘の恋愛を勝手に断ち切ったそうね」 そういや母さん最近探偵の役やってたんだっけ...なんか口調が...ってか母さん本気でよそ様の事情に口出すつもりなのか!? 「ちょっとミナミさん」 「染谷ミナミ...貴方彼女とどーいう...」 「なっ...そんなこと染谷さんに関係ないじゃない」 「そうね確かに...マネージャーにもその子にも怒られたわ、人の家の事情に首突っ込むんじゃないって...でもこれだけは言わせて...私、人の人生奪う人って大っ嫌い!」 あー...言っちゃったよ... 「女性の恋人がいるから何?世間の目が何?子供にとって親だけがこの世で1番頼りにできる人なの、その親に否定されてしまったらどうすればいいの?言う通りに男性と付き合って結婚して子供産んで、いわゆる世間の普通になればいいの?そんなの...そんなのつまらないじゃない!あの子の人生よ!貴女に決定権なんてないわ、誰と恋愛して誰とこの先を歩みたいのか、決めるのは彼女よ」 言いながら泣いてるし...母さん感情高ぶるとすぐ泣くからな...今のうちに回収しとこ言いたいことは言っただろう...し... 「っ!母さん!!」 パシンっ 「っ...う...」 なんか俺、最近殴られてばっか... 「絢斗!!」 「貴女に私の何が分かるのよ...そりゃ認めてあげたいに決まってるじゃない...でも出来ない...だって...大切な娘が今後世間の非難の目に晒されて生きていかなくちゃならないなんて...そんなの耐えられるわけないじゃない!!」 「お母さ...大丈夫だよお母さん、夢とは別れたから」 ...あーもういいや 乗りかかった船だ 「何が...大丈夫なんですか南さん...」 そんなに震えて 「鳴海さんに聞きました、南さん男性嫌いなんですよね...っていうか多分男性恐怖症...ですよね」 体育館裏に呼び出された日、南さんは俺に詰め寄りながらすごく震えていた 教室での彼女の様子もしばしば見ていたけど、露骨に男性を避けて少しでも近づくとそっぽを向き肩を小さく震わせていた 男性に対して態度が冷たいのも、無意識に虚勢を張っていたからだ 「南さんにとって鳴海さんはかけがえのない存在、それはまた逆も然り...お互い一人でいてもずっと互いのことを気にかけて、俺にはお互いにお互いが必要でどちらかが欠けてしまったら意味の無い運命共同体のように見えました」 そんなふたりが、別れるなんてダメだよ 「あんたに何が分かるのよ」 親子揃って同じこと言うんだな 「分からないですよ、二人のことなので...でも俺も南條さんもあなた達が好きなんです」 南條さんがこの事知ったらきっと泣いちゃうだろうな...どうしてって 「おふたりのような唯一無二の関係、とても憧れます...もう一度よく二人で話し合って下さい。そうしてちゃんとお母様方と話して...お母様方のする事はただ1つ娘さん方の決めた事を認めてあげることだけです。 咲良さんと夢さんがお互いに唯一無二なように、咲良さんのお母さんは貴女だけなんですから、世間の偏見に晒されるのが怖いなら俺や南條さんが全力で守ります。」 「私も守るわ」 「っ...だからって今更...もう別れようって言っちゃったのに...」 「なら、もう一度やり直せばいいじゃないですか、大丈夫ですよ2人なら」 南さんはそのまま泣き崩れてしまって、でもお母さんが傍によって肩に手を置いていた 大丈夫だよね2人なら すごく...すごく出張ってしまったよな...他人の家の事情に口出すなってあれだけ母さんに言っておいて結局、最終的に自分が威張ってしまった... ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙...こんなゴミムシみたいなもっさりしたやつに言われたところで何だこいつってなるだけだ...いやなんとか丸く納まったけど....でも俺のせいで話し合いが上手くいかなかったら...? 「ねぇ...」 もし俺のせいで、2人の寄りが戻らなかったら...? 「ねぇってば」 何忘れないでくださいねって...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ なんかめちゃくちゃ上から目線な話し方だったよなア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 「仲田 絢斗!!!!!!!!」 「はぃぃぃっ!!」 「ほっぺた、手当するからだしなさい」 「へっ?あっいいよいいよこれくらい、痛くなかったし」 「いいから、将来有望な俳優さんの顔に傷が残ったら大変よ」 「???...あっ!!」 そういやあの時、咄嗟に体が前に出ちゃったけど俺母さんって言ったような...必死だったから... 「あっあのあのこのこと他の人には」 「黙っててあげるわよ、これで貸し借りなしだからね」 ペシっと手当の終わった頬を叩かれ ふわっと笑った彼女の顔に、思わず胸が高鳴った 「何?」 「へっ!?いっいや...手当、ありがとうございます」 「ねぇ...なんで私が男性恐怖症だって分かったの」 「...ただの男性嫌いの割には徹底してるなと思っただけですよ」 そう言うと 彼女はキュッと俺の袖を掴んで、カタカタと震えながら重たい口を開いた 「...父が最低な人だったの」 「そうだったんですか」 「夢の父親も父と一緒になって...まだ小さかった私に「それ以上は言わなくて大丈夫ですよ、言いたくないでしょうし」...うん」 「来週の球技大会、楽しみですね」 「そうだね」 彼女の涙が肩を濡らし、小さく嗚咽をもらしていたが次第にそれは寝息へと変わっていった 「あら、咲良ちゃん寝ちゃった?」 「母さんが朝早くに騒ぐからだよ」 「朝ごはんまだよね?私作るわもうブランチだけど、急に押しかけちゃったお詫び」 「そうね、急にきて説教たれてくれたお詫びに作ってもらおうかしら」 「イヤミねぇ...撫子朝はパン派だっけ」 「えぇ、それより南聞いてないわよ息子がいるなんて」 あれ...あの2人仲良かったんだ その後ご飯の匂いに釣られて起きた南さんと母さん達と一緒にブランチを食べて 南さんと連絡先を交換して帰路についた 夕方ちゃんと話し合ったというメールと共に鳴海さんと手を繋いでる写真が送られてきて、それを母さんに見せるとよかったと泣いていた 【おめでとうございます】 【ありがとう...それと敬語やめて同じクラスなんだし、それに苗字じゃ呼びずらいだろうし咲良でいいわ】 と言っても恋人のいる子を呼び捨ては流石に...あっ 【じゃあ咲良ちゃんで】 ずっと呼んでみたかったんだよね、昔母さんがドラマでお料理刑事さくらちゃんってやつやってて さくらちゃんって呼ぶのちょっと憧れてたから 【私ちゃん付けで呼ばれる程可愛くない...】 【Σ(´□`;)ごめんっ馴れ馴れしかったよね...じゃあ咲良さんで】 【...いいわよちゃん付けで】 【ありがとうスタンプ】 ちょっとは、仲良くなれたかな...紗夜怒るかな また痛い目にあいたいのかって でも女の子だし...咲良ちゃんは、悪い子じゃないし 大丈夫 大丈夫

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