18 / 30
6月...5
「陽ー!!こっちこっち!トスちょうだい!」
「咲良っ」
ピピッ
「勝者3-C」
やっった!!すごいっ勝った!
「絢斗くんっ!!やった!勝った!私達勝ったよ!!」
「うんっうんっ凄いよやったね夢ちゃん!」
あれから咲良ちゃんだけ名前で呼ばれるのはずるいからって夢ちゃんって呼ぶようになってそれなら自分も名前呼びって事になったけど
案の定周りからの視線が痛い
でも、まぁ
元々こんな扱いだし、特に気にはならないけどね
そんなことを考えていたらポンっと肩を叩かれ振り返ると...
「ほぉ...俺達の事は放っておいて自分は女と宜しくやってる訳か」
「はわわ...」
「酷いですよ先輩...僕達あんな事した中なのに...」
「ヒェェ...」
元演劇部エース怖い...
「絢斗くん...?この子達は?」
た...助けて下さい...
「絢斗?」
「あっ咲良ちゃんおめでとう」
「ありがとう...で?何してんの?」
「あやちゃん」
「わっ紗夜...」
こっこれは...絶体絶命というやつでは...
やられる...今度こそ監禁される...
「体育館裏来てもらおうか」
いや...監禁の前にカツアゲされる...
「あやちゃん」
「あんたは黙ってて、ちゃんとこいつの口から言わせろよ」
そうだよね...訳も分からないまま避けられてほっとかれたと思ったら女の子と仲良くしてるんだもんね
そりゃあ嫌な気持ちになるよね...
「大毅?何してんの?」
「陽はちょっと黙ってて、これは俺達の問題だから」
「ちょっとそんな言い方」
「分かった...話すよだから喧嘩しないで、いいよね紗夜」
「...まぁあやちゃんがいいなら...俺も一緒にだけど」
「うん」
放課後、体育館裏に集まり
俺は、静かに話し始めた
「小学生の頃にね、凄い仲のいい子がいたんだ。」
その子は紗夜とも仲が良くてよく3人で遊んでた
家も俺と同じマンション、紗夜がお稽古で来れない日は2人で遊んで
「よく笑う子で、周りの人も元気にしてくれるような太陽みたいな子だった」
そんなある日、事件が起きた
「誘拐されたんだ、俺...小学校5年生くらいの時かな」
その日も3人で帰っていて、俺の家でゲームやろうなんて話しながら帰っている途中黒いワゴンから出てきた数人の男達に拉致られて
「絢斗だけを?」
「うん...逃げてって言ったんだ俺が」
「俺は逃げるつもりなんてなかった...だけどアイツが」
その子は紗夜の手を引っ張って逃げて、大人達は追う素振りは全くなくて最初から俺だけが目的だったらしく
俺を車に乗せたらすぐに行ってしまった
「あとから思えばこの時におかしいって気づくべきだったんだろうけど、ちゃんと逃げられたって安心が上回ってそんな事考える余裕もなくて」
その後すぐ目隠しされて、どこにいるのか分からないまま1週間、男たちの相手をさせられた
「っ...」
「うそ...」
これは皆には言えないこと。
奴らは1週間ずっとカメラを回していて
それをどっかのマイナーなAVサイトに掲載していたらしく
良心的な誰かが通報してくれて、警察が来てくれた頃には
その時俺に突っ込んでたやつ以外みんな部屋に倒れていた
全員ヤク中だったらしい
オーバードーズってやつだね
「俺の叫び声とか泣き声とか聞こえた人が通報してくれて事なきを得たんだけどその主犯ってのが」
「アイツだったんだ」
「アイツって仲良かった友達?」
「そ、聞いたことある?三浦商事って」
「あぁ...確か20××年頃、社員が会社の金横領して社長が自暴自棄になって社員リストラしまくって潰れた会社...」
「いいえそれデマよ、うちの会社何人かそこから移ってきた人いるから、聞いたことある」
「そ!実際は、社長が横領して繋がってた裏社会のヤツらに流してたんだよ、リストラされたんじゃなくてその事が社員に知れ渡って辞めてった人が大半...でもまだ世間にそれが知れる前だったから何人か口封じに殺されちゃったんだけどね」
今思い出しても本当に酷い事件だった
「でもその事となんの関係が?」
「その社長の息子がアイツなんだ」
「逆恨みってやつかな、なんでお前みたいな努力も何も知らないようなやつが幸せそうな顔してんだって言われたよ」
あの時の、俺を睨みつける憎悪と怒りに満ちた顔
きっとずっと忘れない
「でもなんで絢斗先輩だったの?水野先輩だって襲われてた可能性はあったよね」
「僕は苦労してるように見えたらしいよ...まぁ小学生にしては色々やりすぎていたのかもしれないね」
あの頃の紗夜は、ほとんど毎日習い事漬けだったからな
華夜子さん、厳しい人だし
まぁ今は母さんがビシッと言ってくれたおかげで習い事も半分にへったんだけど
...そのおかげで最近うちに入り浸るようになったんだよね
「でもだからって俺達を遠ざける理由にはならないよなぁ?」
「アイツの二の舞になったらどうするんだ...現にお前達のせいで絢斗はあの時殴られたんだ」
「それは...」
「あの日...駆けつけた病院で酸素マスクつけられて包帯巻かれてボロボロの絢斗見た時に決めたんだ、今後何があろうと、絢斗を手放したりしない絶対に...って」
紗夜...
「なるほどな...まぁそんな事があったんじゃ俺達からそいつを遠ざけようとしても無理はないけど俺ァ別にそいつがいなくたってなんら支障はない元々そいつが俺の陽にちょっかいを掛けてるから見張ってただけで」
違うって言ってるんだけどな....
「だが、いい加減こいつがうるせぇんだ、なんで避けてるのか、なんで急にそうなったのか聞きに行こう会いに行こうって」
「春兎くん」
今まで俺にそんな事してくれた人いたかな...会いに行こうなんて思ってくれた人いたかな...
あぁ...嬉しいなぁ
「紗夜...大丈夫だよこの人たちは」
「僕は信用しない...」
「紗夜...」
やっぱダメかぁ...
「はぁ...鳴海さん」
「はいっ」
「この中で1番面識があって信頼できるのは貴女です。だから貴女に任せてもいいですか?」
「それは、もちろん!任せてください責任もって絢斗君のお友達でいます!」
なんか...なんだろうこの腑に落ちないかん...
えっ俺お守りされます宣言されてるの...?
てか面識あるって何
あーやだなんかモヤモヤする
ともだちにシェアしよう!