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8月...3
「あやにー!」
「あん?」
「あっあんちゃん」
「あんちゃん?」
「んだてめぇいつの間に彼女出来たんか」
「違うよ、あの子は幼なじみの子」
あれから数日、なんの案も出ないまま時間だけが過ぎていき
このままでは行けないと事情を知ってる大毅君と春兎君とで図書館で何か手がかりがないか調べてみようという事になった。
「どうしたの?」
「あやにぃ今日さ暇?って聞こうとしたんだけど...そうじゃないみたいだね」
周りを見渡しながらそう言い、大毅君達にニコッと笑いかける
そういえば男性苦手なんだっけ
顔が完全に余所行きだ
「それでわざわざここまで?」
「お散歩もしたかったから、じゃあねあやにぃ」
「...そうだ、あんちゃんも一緒に行く?図書館」
あんちゃんには悪いけど、何となく今この子を1人にしちゃいけない気がする
「...勉強?」
「ちょっと調べ物があるんだ、人手は多い方がいいしさ」
「うーん.....いいよ暇だし」
それと昔の事を、少しだけ思い出した。
あんちゃんの持っていたお菓子は、いつも潰れていたこと
あんちゃんはいつもお腹を空かせていたこと
当時着ていた幼稚園のスモッグから見えるか見えないかの位置にいつも痛そうな痣を作っていた事
周りの親はあの子を避けていた事。
「あんちゃん、良かったら今日夕飯家で食べてかない?」
「ほんと?わぁーい」
2人は、誘わない方がいいよね
男性が苦手なら、密室空間で知らない男3人と一緒とか嫌だろうし
結局あれから図書館の閉館時間までこれかなって本を読み漁ってたけど、何の成果もえられなかったな
「小説とか舞台なら、強く願えば奇跡が起きて叶うみたいな感じだけど現実問題そうもいかないよなぁ」
「いっその事本体と霊体を合わせてみるとか」
...ってのは、あんまり宜しくないのかね
「何か刺激を与えれば起きるかもしれないわよ?それこそ運命の人の愛のキスとか」
「もっと現実味ないですよそんなの」
っていうか一緒に調べてもらうからにはあんちゃんにも事情を話しちゃったけど、信じてくれてよかった...いやほんと...何この人みたいな目で見られなくてよかった...
2人とも普通に話せてるみたいだし
「じゃあ俺達この辺で」
「あっうん、またね」
...さてと
「ごめんねあんちゃん、なんか無理やり誘っちゃって」
「全然!あやにぃの家久しぶりー相変わらずお母さん忙しいんだね」
「あれ?あんちゃん家来たことあったっけ」
「何言ってるのよ、何度か行ったじゃないあやにぃのお母さんが、かの有名な女優 染谷ミナミだって事も知ってるわよ...ってまさかあやにぃ本当に何もかも忘れちゃったの?」
「いっいやだって遊んだのなんて結構昔だし...」
「結構昔って...小学生ってそんな昔だっけ...?」
「小学生?小学生の頃ってあんちゃん一緒の学校じゃ無かったよね?」
「え?」
「え?」
だってたしかあの頃...幼稚園の頃俺は隣町に住んでていつも迎えが来るまで園の近くの公園で遊んでて...そこにあんちゃんが来たんだ。
あの地域は学区が違うから同じ小学校には通わないはず...
「あやにぃ...もしかして覚えてな....っあ...そうか...ごめんごめん私なんか勘違いしてたっぽい」
「え?」
「小学生の時じゃなくて幼稚園の時だったね、あの頃ミナミさんに、絢斗のお友達なら今度遊びにおいでって言われてその後何回かお邪魔したのだけれど...でも確かに2.3回だったし、いた時間も短かったから覚えてないのもしょうが無いね」
「そう...だね?」
なんだろう...何か忘れてるのかな俺
小学生の頃の事なんて忘れようにも忘れられないはずなのに
「絢斗...?」
...紗夜
わ...すごい久しぶり
「...っぁ...」
何か声をかけたいのに上手く言葉が出てこない
「彼女?」
「っ...」
俺達を見比べてなんでもないように言われてすごく、心が痛い
ダメだ目の前ぼやけてきた
いつから俺こんな女々しくなったのかな
「...紗夜彼女出来たんだってね」
「は?」
「咲良ちゃんから聞いた、仲良さげに手繋いで歩いてたって...おめでとう、佳代子さんのお眼鏡にかなう子に会えてよかったね」
「おい、絢斗」
「行こあんちゃん」
「えっちょっあやに」
最低だ俺、こんなの紗夜絶対変に思うに決まってる
彼女じゃないかもしれないのに、ただ仲のいい女の子ってだけかもしれないのに
あぁ...嫌だ
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