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She is Always a Woman③
夜、カホが寝た後、ユウジに心底ウンザリした顔で見送られた。
なんだよ、ユウジもいるしカホの風呂と食器洗いも手伝ったし、これで文句ねえだろ。
3駅離れた場所にあるドトールに向かう。
ショーケースの中の食べ物も客もまばらになった店内で、目印の黒いVネックのTシャツを着た30代半ばの男を見つけた。背ぇ高いなオイ。
向こうも俺に気づいたようで、
「"鈴木"さんですか?」
と柔らかな笑みを浮かべた。
「ホントにゲイっぽくないんですねえ」
上から下まで視線でなぞられる。
ゲイにはノンケを好むヤツらも結構いる。
何故だか俺はゲイ独特のニオイがまったくしないらしく、割と途切れることなく相手を見つけられる。
こんな言葉を使ったら叩かれそうだが、普通に見える、というのがゲイである俺にとっての最大の特徴だった。
中身は爛れて腐り切っているというのに。
よほど面の皮が厚いのだろう。
「よく言われます。ってかいいんですか。
既婚者でしょ」
男は忘れてた、と何事も無かったかのように指輪を外す。
「今日結婚式だったんですよ、俺の」
「アンタも中々のクズだな」
おっと、本音が。
しかし男は笑みを崩さず、ですよね、と頭をかいた。
「嫁さんは?」
「友達と三次会ってとこかな」
嫁も嫁だな。
「なんでそんな女と結婚したんだ?」
「しょうがないじゃん。好きになっちゃったんだから」
こいつバイか。
ヤツは目尻を下げて蕩けるような顔をしていた。こいつも"たった1人の女"に翻弄される男の1人らしい。
「そんな顔しないでよ。今日で最後にする。俺なりの愛の誓いってヤツ」
確かマルティーニがそんな歌書いてた。
"愛の歓び"だっけ。嫁がシルビアみてえな不実な女じゃなきゃいいがな。
まあ俺には関係ないさ。
今からぐちゃぐちゃのセックスをするだけなんだから。
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