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Born This Way②
そいつはアンと名乗った。
プロフと顔も名前も違うじゃねえか。
「ごめんな、全然ゲイっぽくないからわからんかった」
アンはコロンとした茶色い革のバッグを膝に置き、俺の向かいに座る。
ダークブラウンの髪を巻き、唇にリップが光る、どこにでもいるような今どきの女子大生だ。見た目は。
「ホントについてんの?」
テーブルの下を指差す。
「ついとるよ」
スカートの間を抑えながら、はにかんで笑う。
「で、今日はセックスできるの?」
「ややわあ、こんなとこで」
桜色のチークを塗った頬がほんのり染まった。
そして、でもええよ、と囁く。
ネイルもしているのか桜貝のような爪が髪をかきあげる。
「でも僕な、行きたいとこあるんよ。先に付き合ってくれる?」
ああもう、こうなったらとことん付き合ってやるよ。
連れていかれたのは女向けの服屋だった。
袖がヒラッヒラのワンピースだの、履いたらソッコーで折れそうなピンヒールだのが置いてある。なんかこう、女らしいっての?
こういうの着た女がノンケの男に好かれそうな感じ。
スッゲー居心地悪い。
カホの服ですらこんなとこで買った覚えがない。
アンの了解をもらって、レディ・ガガのシャウトを聴きながら店の外で待つ。
「ごめんね」
やがてアンはほくほくした顔で、店のロゴの入った紙袋を持って出てきた。
「遅え」
たっぷり5、6曲は堪能した。
レディガガはたった15分で、かの有名なBorn This Wayを書き上げたんだぞ。少しは見習え。
「そんな怒らんといて」
アンは綺麗に形が整えられた眉を下げる。
「荷物持ちはやらねえからな」
「もちろん。僕男やから。女の子扱いせんでええよ」
その言葉に少し気が楽になった。
「僕な、女の子の格好するのが好きなだけなんよ」
「ふうん」
俺には無理だな。
「後一軒だけ行ったら、ご飯食べてホテル行こ」
しょうがねえな、と不機嫌丸出しで返事したにもかかわらず、アンはありがとうと柔らかく微笑んだ。
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