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Hungry Spyder④
外の街灯に虫が集って、時々ジジっと焼け落ちる音がする。
だれか泊めてくれるヤツいないかな、とアプリを開いて、はたと気付いてすぐ閉じた。
あんな目に合ったってのに、俺はマジで終わってる。
最近会ったヤツらはみんないいヤツらだったから、うっかりぼんやりして変なのに捕まっちまった。クスリなんかやんなくても相手してやるのに。
もちろんああいうリスクは承知の上でやっている。俺が言うのも何だけど、ただ気軽にやっていいもんじゃないのは確かだ。
まだすっげえ頭痛いし気持ち悪い。
間抜けな話だけど、マンションのすぐ近くの公園のベンチに横になるのが精一杯だった。
木の上で八つの青い葉にかかる蜘蛛の巣が、蛍光灯に照らされていた。夜中なのに白い蝶がかかっている。それなのに蜘蛛は隅っこの方でじっとしていた。
食わねえのかな、俺だったら我慢できねえけどな、と思いながら目を閉じた。
更に間抜けな事に、朝起きたら顔をぐしゃぐしゃにしたカホの顔が目の前にあった。
カホの顔の向こうには、太陽に照らされ始めたばかりの空が見えている。
そういえばここ公園だったな。
ユウジもカホも寝間着の上に一枚羽織っただけの格好だった。
カホはハジメちゃん、ハジメちゃんと泣き続け、ユウジはバツが悪そうにそっぽを向いていた。
「ハジメちゃん死んじゃったの?!」
「・・・生きてるよ・・・」
自分の声が頭に響いてズキズキする。
でも昨日よりは全然マシだ。
「ハジメ」
ユウジは難しい顔をして、口元をもぞもぞさせる。
「荷物、取りにくるんだろ」
顎をマンションの方に動かした。
なんでかわからないけど、すげえ安心して、にやけそうになるのを我慢する。
「起こして」
俺は手を差しだした。もうほとんど調子は戻っていたけど。
ユウジはしょうがねえなあ、と手を取る。
愛とまでいかなくても、今はこれで充分だ。
白い蝶が、青い空をひらひらと横切った。
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