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Just Push Play③
あーもう、セックスセックスセックスがしたい。
かれこれ1ヶ月近くシてない。
携帯はなくても悲しいくらい困らないが、大抵週1でヤリまくってたからもうそのストレスたるや。
ピリピリしてカホにも当たりそうになる。
んでユウジがそれを見てイライラしてこっちもストレスが溜まるという負のスパイラルに陥っている。
もういっそ前のが良くないか?
イライラムラムラして過ごすより、ストレスも性欲も一緒にぶちまけて、スッキリした方が絶対いいと思うんだけど。
まあでも、ユウジには言ってないことがある。先月、つまりスマホを取られる前会う約束をした奴がいる。
あれから連絡してないから来るかどうかは賭けだ。
俺は金曜の夕方、5駅離れたデカイ駅に向かった。Trip hoppin'を聞きながら待つ。
最近はこんなゴリゴリのロックばっか聞いてる。
そいつは改札を出てすぐ見つかった。
「よ。ダニエル」
「誰ですかそれ」
ハリーポッターに似たメガネは笑った。
今日、ダニエルはリクルートスーツを着ていた。
まだまだ着られている、という感じがする。
「もう就活?」
「あ、はい、企業の説明会に」
クソ真面目だな。俺二十歳のとき何してたっけ。去年の事なのに思い出せない。
まあいいや。
「じゃ、ヤろっか」
「いきなりですか」
「溜まってんだよ」
「お腹すいたんでご飯食べてからでいいですか」
言うようになったじゃねえか。ビビりまくってた童貞のくせに。
俺たちは駅前のチェーンの牛丼屋に入った。
食券を買って、席について待つ。正直メシなんかどうでもいいから早くヤリたい。
イヤホンを付けようとすると
「僕、何かしましたか」
と聞かれた。
「なんかイライラしてるみたいで」
「早くヤリ」
「わかりました、わかりましたから」
牛丼が運ばれてきたからか、ダニエルはヘラヘラしながら宥めてきた。ダニエルはかっこまず、一口ずつ箸で口に運んでいる。育ちがいいんだろうな。
食べ終わると
「鈴木さんっていくつなんですか」
とかクソどうでもいいことを聞いてきた。
「21」
「えっ僕とイッコしか変わらないんですか?!」
手に持ったコップの中の水が揺れた。相変わらずリアクションがデカいやつだな。
「もう仕事してます?なんかすごく落ち着いて見えて。もっと上かと思ってました」
「ただのフリーターだよ」
落ち着いてなんかいない。高校の時から中身はガキのまんまだしサカりまくってるのも変わらない。
「へえ、僕専門学校行ってるんです。会計の。あっという間で、もう就活ですよ」
「いいじゃん。資格とかとれて」
こっちは高卒で資格ナシでバイトしかしてない底辺だっつーの。
たまに"Fry away from here"でもしてやろうかと思う時もあるけど、ユウジやカホや音楽やセックスに振り回されているとどうでもよくなる。
とりあえず、今はセックスだ。
エアロスミスのロックナンバーのように、菓子食ってるやつもヤク中もロックスター気取ってるやつも、音楽に身を委ねてピー音をおっ被せてソレをしようじゃないか。
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