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Just Push Play⑤

帰ると、珍しくユウジはカホと寝落ちしていた。イヤホンからはI don't want you miss a thingが流れている。 エアロスミスのアルバム「Just Push Play」に収録されている、映画アルマゲドンで有名なやつだ。 ーーーWatch you smail while you are sleeping    《君が眠りながら笑うのを見ているんだ》 ーーーWhile you'er farway dreaming    《君は遠く離れて夢を見ている》 ーーーI could spend my life in this sweet surrender    《この甘い柵の中で人生を過ごしても構わない》 しばらく寝ている顔をじっと見つめる。 ガキみてえな顔してやがんの。 俺はそうっと顔を近づけて唇に、いや、やっぱやめとこ。 微かな息さえ届かないように息を止めて、瞼に唇を落とした。 ーーーThen I kiss your eyes    《それから君の瞼にキスをして》 and thank God we'er together    《一緒にいられることを神に感謝するよ》 ガラにもないことをして背中がムズムズする。 さ、俺も寝るかな。 明日は、もう少し2人に優しくしてやるとするか。 次の日、めちゃくちゃスッキリした気持ちで目が覚めた。マライア・キャリーのEmotionに出てくる女もきっとこんな感じだったんだろう。 ユウジは目玉焼きを焼きながら 「そういやお前、友達なんかいたんだな」 なんて言った。 「は?」 「昨日駅にいたじゃん」 ああ、祐次のことか。 「セックスしてきただけだけど?」 「は?!すっげえ真面目そうだったじゃん、アイツもゲイなのか?!」 「お前ゲイをなんだと思ってんだ」 「お前みたいなロクでもないヤツばっかだと思ってた」 思わず吹き出した。 なんだ、ゲイを毛嫌いしてたのは俺が原因かよ。 「てかお前、俺が携帯持ってたはずなのにどうやって」 ユウジはハッとして寝室に目をやる。カホが起きてきた。この話は一旦終わりだ。 でも、朝飯を食べたり着替えたりしている間、ユウジはずっと難しい顔をしていた。 それから保育園のスモックを着たカホと、スーツ姿のユウジが俺よりも少し早く家を出る。 「なあ、ハジメ」 ユウジは、玄関先で俺に携帯を返してきた。 急にどうした。 「あってもなくても一緒みたいだしな」 ユウジは溜息をついて、それから 「・・・ちゃんと無傷で帰ってこいよ」 と肩に手を置いた。 じゃ、行ってくる、とユウジは扉を閉め、カホはハジメちゃんバイバーイと手を振った。 俺はスマホを手にしばらくポカンとしてた。あんな事言うなんて珍しい。 なんかくすぐったくなって、フッと笑いが込み上げた。 早速画面を開くと 「・・・まあ、そりゃあそうだよな」 電源が切れて画面は真っ黒だ。 バイトに行くまでまだ少し時間がある。 俺はスマホを充電器に繋いで、ウォークマンのスイッチを入れるのだった。

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