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Hated John④

「君、高校生?」 オッさんはジョンじゃなくて俺に声を掛けてきた。 「はい、今送っていくところです」 ジョンはにこやかに言った。オッさんは口を捻じ曲げる。気に入らないってハッキリ顔に書いてあった。 「早く帰りなさい」 オッさんは俺に言って、また自転車に乗って行った。 「アンタ嫌われんての?」 「だよなあ、顔に出すから出世しないんだよなアイツ」 爽やかな笑顔のまま鼻で笑う。 「さ、行こっか」 仕方なく、家とは違う方向に歩いていった。誰がお前に教えるかよ。繁華街の方に向かう。 「俺さ、警察の上の方の息子なんだよね。 先輩みたいに良く思ってないヤツは少なくないんだよ。ちゃんとお利口さんにしてんのにさ」 「ふうん」 「職質とか巡回とか煙たがられる事が多いし、勤務体制はハードだし、ロクでもない仕事だよ」 「辞めればいいじゃん」 「この仕事しか知らないし、定年してからがオイシイから、出世しないでのんびりやるつもり」 やっぱこいつクソだな。 「なんで俺に構うんだよ」 「だって好みのタイプだし」 コイツあっさり自分がゲイだって言いやがった。 「やっぱノンケだった?」 俺の顔を覗き込む。甘いマスクってこういう顔を言うんだろうか。女みたいな焦げ茶色の目と唇がエロい。 「・・・ゲイだけど。多分」 こんなこと他人に初めて言った。 一瞬、言葉と一緒に心臓が飛び出しそうになった。 「あーよかった。ノンケっぽかったからさ、見た目が」 よかった、って言葉に少し安心している自分にイラついた。 横目にジョンの姿を見やる。 やっぱ警察官てみんな剣道とか柔道やってんのかな。背筋が自然にスッと伸びている。帽子から畝りのある襟足が少しだけはみ出していて、見れば見るほど色気のあるイケメンでムカつく。 「ところで、お前の家ってラブホなの?」 足を止めると、ラブホが立ち並ぶ通りの前まで来ていた。 「セックスしたいなら非番の時な」 ヤツはニヤリと笑った。 顔が熱くなって 「アハッ顔真っ赤!かわいっ」 ぶん殴ってやろうかと思った。 「今度の木曜日非番だから、暇だったらxxって駅に来てよ。現役のオマワリサンが色々イイコト教えてやるよ」 今度カラオケ行かない?とでも言うような軽い口調で、もう色々とツッコミ所しかない台詞を吐きやがった。 だけど、そういう事に興味がない訳じゃなかった。 イケメンだし、家にいたくなかったし、それに、ずっと頭の中に居座ってるごちゃごちゃしたモンが不愉快で、何かが変わるんじゃないかって思った。 だから、ソイツの言う事に頷いたんだ。 「アハッ超楽しみ」 ヤツは白い歯を見せて笑った。 「あ、ちょっとごめん。またな」 ジョンは自転車を引いて、路地に転がっていたスーツ姿のオッさんに近づいていった。 何やら声をかけていたが、オッさんは真っ赤な顔して怒鳴ってはぐったりするのを繰り返してた。 大変そうだな、と思いながら見ていると、振り向いて平気だと言わんばかりに白い歯を見せた。 出来る大人っぽい仕草にまたイラッとして、俺はさっきの道を戻っていった。

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