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第6話 真っ暗な家
『あんたなんて産まなきゃよかった!!』
『あんた殺して私も死ねばよかったんだ!』
『…………ごめんね、ごめんねえ…っ、佐久…』
「ご、ごめんね…ま、ま…………………………っ…ん?…んぅ…」
どのくらい経ったのだろうか
ベンチから起き上がると夕日が出ていて辺りはオレンジ色だった
頬が濡れた感じがして手を当ててみると手が湿って泣いていたことに気づく
なんだ?
よく分からないがたまにあること
僕はハンカチなんて持ち歩かないので制服の袖で涙を拭った
「はぁ…帰るか」
んーっ、と立ち上がり伸びをしてからこの場を離れる
明日からはここに昼休み来よう
軽くるんるん気分で歩き出し、来た時の少しだけ歩きやすい道から戻る
出た先は校舎の向かいにある特別棟の裏
「こんなとこから入るなら皆知らないだろうな…」
こんな場所を見つけられるなんてラッキーだ
ここじゃ、雨の日は難しいだろうけど
雨なんか降らなければいいのに
そしたらきっとあの胸がほかほか暖かい気分がまた味わえるだろうか
放課後のクラスメイト達がいなくなった教室に戻り、鞄を持って帰路についた
今日はコンビニでいいや
そう思い徒歩10分の家までの間にあるコンビニに入る
あまりお腹も空いてないので今日はみかんゼリーと栄養ドリンク
「420円です」
2日に1回はこの時間に寄るため、顔見知り程度にはなった若く少しチャラい感じの男の店員さんへピッタリのお金を渡す
荷物を受け取り店の外へ
すでにオレンジ色だった夕日は沈み、辺りは暗くなっていた
あの真っ暗な1人ではとても広く感じる家に帰らねばならない
1人は怖い、寂しい、と思わないでもないが、小さい時からそれではもう慣れてしまっている
まぁ、小さい時はよく泣いていた
“まま、ぱぱ、かえってきて…”と何回も思った
でも未だにひとりきり
僕に“家族”と“愛情”は覚えている限りでは1度も与えて貰ったことはない
小学校に上がってから今まで、人見知りの僕には“友達”すらない
きっと僕には向かないのだろう
そうこう考えているうちに家に着く
鍵を開け、真っ暗な家の中へ
買ってきたゼリーは冷蔵庫、栄養ドリンクは胃の中へ
そのままお風呂へ入り、長風呂の僕は1時間程浸かって寝室のベッドへ入り眠った
こんな日常が明日も続く
きっともう僕の日常が変わることはないだろう
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