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第11話 叶いすぎた願い
「じゃあ、そろそろ帰ろーかなー」
んーっ、と伸びをしながら立ち上がったきーちゃんに驚き漫画から顔を上げると窓の外はもう暗くなっていた
ゆうちゃんのオススメしてくれた漫画はとても面白く時間が経つのを忘れてしまっていたらしい
「あの、これ。ありがとう」
「あー、どっか分かるとこ置いとけよ。また来るだろ」
「え、でも…」
「いーから、どうせ部屋綺麗にするとかねーから分かるとこ置いとけ」
いや、違うんだ
すんなりと次来くることを前提に言われたことにびっくりして
「いーんだよ!どーせゆうちゃんなんてそこら辺にエロ本でも転がしとく様な奴なんだから、漫画の一つや二つでカモフラージュしてあげた方が優しさだよー」
「何の話だよっ!」
え、えろ本なんて…
ぷしゅーと煙が上がりそうになる
「ハハッ、サクちゃんかわいーねー」
そういう事は誰かと話したことないから、すぐに照れてしまう
それに僕はそういった事にあまり興味がないから余計に分からない
「か、帰りますっ」
「俺も帰るー」
僕は慌てて立ち上がり鞄を掴んだ
それに続いてきーちゃんも鞄を背負う
「途中まで送るわ」
ゆうちゃんも持っていた漫画を机に置いてパーカーを羽織る
送りなんていいのに…僕男なのに…
「姉ちゃん、佐久送ってくるー」
「はーい!佐久くん、また来てねえ!」
「ありがとうございます!」
ゆうちゃんがリビングに顔を出して料理中だった千夏さんに声をかける
少しだけソファに座った写真の人が見えて胸がドキッとした
「気をつけてね」
ゆうちゃんの声に顔をこちらに向けていた写真の人は僕と目が合いニコッと笑いながら言った
やっぱり綺麗だ…
この世のどんな物よりも綺麗
それから僕の心臓はドキドキしっぱなしで止まらない
どうしちゃったんだろか、今日は
初めて友達ができたから、欲しかったものが手に入ったからきっとびっくりしちゃったのかな
そうだ
だって今日は気持ちがコロコロ変わって大変だったからきっとびっくりしちゃったんだろう
それに、ずっと会ってみたかった写真の人がいて、今日は願いが叶いすぎたから…
きっとそうだよ…
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