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第12話 もう1度
「じゃーなー」
「うん、ありがとう」
「お前ん家親いねーの?」
「あ…うん、し、仕事だから…」
両親を最後に見たのいつだったっけ…
これだけ帰ってこないんじゃもう他に家族作ってても納得出来る気がする
「そーか、じゃあまた明日な」
「うん、また明日」
手を振ってお別れ
僕はくらい家の中へ入る
真っ暗な家の電気を玄関から順に付けていく
あっという間に、家中が明るくなった
リビングのテーブルの上
そこには、ある程度分厚い封筒が2つ
「あぁ、もう1ヶ月」
中を確認するまでもなく、僕はそれにお金の札束が入っていることが分かった
毎月両親が別々持ってくるお金たち
高校生が1人で使う分なんて限られているのに、余分に入れて〝これで関わらないでくれ〟と圧力の様なものをかけてくる
「たまには美味しいものでも食べてみようかな」
今までファミレスにコンビニ、これだけ通っていると食べるメニューも決まっているし
何となくあまり関わりのない親からもらうお金は気を使ってしまって必要以上には使えなかった
でも、なんかそんな事を考えているのが嫌になってしまった
この家に帰る度、僕は1人なんだと再認識する
この封筒を見る度、愛されてはいないんだと思い知る
気づかないうちにポロッと涙が零れた瞬間…
ピーンポーン、ピーンポーン
「な、に…?」
誰だろうか
こんな時間にインターホンが鳴るのはほとんど無くびっくりしてしまう
僕は零れた涙に気づかないまま玄関を開けた
「どちら様ですか?」
「ごめんね、さっき侑那くん家にいた奴なんだけど…」
「え?!」
そこにいたのはなんと“写真の人”だった
「ど、どどうしたんですか?」
「ははっ、やっぱり侑那くんの言った通りだ。急にごめんね、侑那くんの部屋に忘れ物」
小さな紙袋を差し出され、受け取り中を見ると僕のハンカチと携帯だった
「あ、ありがとうございますっ」
「うん、ハンカチはともかく携帯は困ると思って侑那くんに家教えてもらったんだけど、勝手にごめんね?」
「いえ、助かりました」
「それね、君ともう1回会いたくて譲ってもらったんだ。本当は侑那くんが行こうとしてたんだよ」
「…え?」
な、なんて?
僕ともう1回会いたかった、の…?
言葉の意味を理解するとなんだか感動してしまって受け取った紙袋を持つ手が震えてしまっていた
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