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第13話 止まらない
いやいやいやいや!待って、感動してるけど待って?!なんで“写真の人”が僕と会いたがってるの?!
ハッと現実に戻ったような気分で頭の中でツッコミを入れる
「あ、あの…僕なんかしました、か?」
そうだ、それしかない
きっと気づかない間に“写真の人”になにかしてしまったんだろう
あ、変に反応してしまった時だろうか
確かに失礼だったかもしれない
頭の中がこれ以上ないくらい早くフルスピードで回転していた
「え?何もしてないよ?」
だったらなんでだ?!
「あ、あのさ、侑那くんから何か聞いたかな」
「なんか…?」
「あの、千夏さんと付き合ってる…とか」
「き、」
聞いたと言っていいんだろうか
やっぱりその話を聞くとなんでかモヤモヤが胸に広がる
「聞きました…けど」
「それね!違うんだよ!!俺は千夏さんの後輩で侑那くんが通ってる学校の卒業生なんだよ!それで…俺…君が校門から出てくるのをこの間見かけて……その、」
「あ!その時になんかしちゃったんですね!?すいません!!」
「ち、違う!!」
本当になんだ?!焦りまくっている僕はもう訳が分からなくなっている
僕は一方的にこの人を知っていたと思っていたけど、“写真の人も”僕の事を知っていたという事がまず嬉しい
「…あのね、俺は、千夏さんと付き合ってなくて千夏さんは相談に乗ってもらっただけなんだ。俺…君のこと好きなんだよ。一目惚れなんだ!」
………ぽかーん、としてから首を傾げた僕
言葉の意味が一向に理解できない
「あー、そうですね。一目惚れですか。いいこと?だと思います」
「うん、いいことなんだけどね。俺は君が好きなんだ。分かってる?」
「分かって…ま、す」
分かってない僕に必死に説明する“写真の人”
「でも、俺は君のこと何も知らない。名前も歳も、好きなものも嫌いなものも。本当に何も知らないんだ。俺のこと好きとか、そういうのは後からでもいい。君も俺のことは知らないだろ?だから、知りたいんだ。君のこと1から全部で 知りたい。お願いします」
こんなの初めてで何も分からなかった
僕のことを知ろうとしてくれたこと、僕の意思を尊重してくれたこと、なにより、僕を好きだと言ってくれたこと…
全部が初めてで涙が溢れてしまった
溢れた涙はさっきみたいにすぐ止まりはしなくて、拭っても拭っても溢れた
「君は泣き虫なんだね。出てきた時も目がウルウルしてたから泣いてたんだろ?」
「え…?」
僕が泣いたことを気にしてくれたことも…
「なんだか…うぅ、きょ、今日は…ひっ、はじ、めてのことば…っ、かりだ」
泣きすぎて声が震える
何を言ってるかも自分で分かってないのに分かってくれる“写真の人”
「俺の名前は新山 夕月(ニイヤマ ユウヅキ)です。君の名前を聞いてもいいかな?」
新山さんのハンカチを差し出される
「ぼ、僕は…っ」
こんなに心が暖かい日は生まれて初めてだと思った
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