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11『春将軍の到来』
俺は冬将軍だ。最近、春将軍に押されて困っている……。
「冬将軍、来たよー! お花見しよう!」
例年ならば、まだ雪が降る季節であるはずなのだが、今年は桜が咲いている。なお、去年も早く花が咲いた。一昨年も、その前の年も、少しずつ少しずつ、開花の時期が早くなっている。
「……」
それに伴い、春将軍であるコイツが、お弁当と酒を片手に、俺の家へと上がり込んでくるようになった。というよりも、コイツが俺の方に来る為、どんどん春のような温かい空気が、冬の陣地まで入り込んでくるのである。
「冬将軍の好きなタコさんウインナーを作ってきたんだよ!」
「……」
「冬将軍、手、冷たい! 凍ってるみたい! 俺が温めてあげるね!」
「……」
俺の右手を、春将軍が両手で覆うように握った。赤面するなという方が無理である。このままでは雪だけではなく、俺の心まで融けそうだ。俺の心がどんどんポカポカしていく。
「冬将軍大好き。もう好きすぎて交じり合いたい。もう冬と春っていう区切りは取りやめにして、一つにならない?」
年々俺は、コイツの誘惑に負けそうになる。だって俺も、一緒にいたいと思ってしまうからだ。実を言えば、困ってなどいないのかもしれない。
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